otomisan

警視庁物語 遺留品なしのotomisanのレビュー・感想・評価

警視庁物語 遺留品なし(1959年製作の映画)
4.0
 今回も遺留品のない事件に刑事は憶測をもとに尋ね回り、張り込みっぱなしな感じなんだが、のべつ爆発や銃声を頭の中で弄んでいるようならこうした事の「それらしさ」には気が付かないかも知れない。
 聞き込みの相手は現役時代のうら若き「じいちゃん、ばあちゃん」たち、親父やお袋さんのランドセル姿が砂利道を占領する様子は若い衆にとっては曾祖父母、祖父母ぐらいだろう。世情風俗の外見の違いを忌避するならしようもないが、同じ東京の昔の景色に面白みでも感じられたら目っけ物だ。
 そんな事件の容疑者緊急逮捕の報が夏の夕刻。エアコンも電子機器もない時代の夏は電力消費のピークを冬から奪うのにまだ10年を要する。それでもまだ第2班の詰所は灯りもつけない。容疑者の結婚詐欺に引っ掛かってお金を取られた女が今は参考人から被害者になったが、最前までは犯人隠匿になるか共謀者になるかの瀬戸際だった。
 今でもありそうな男の口車に乗ってしまう働かねばならない女をこれからは証人として引致することになる。やはりその顔を見たくはないし、当人も見られたくもないだろう。夏の夕方6時半の薄闇に言葉をかけて退所を促すのに、安堵するというか、ものさびしいというか、それを破る様に張り込みを解除する連絡の電話のダイヤル9回がなんだか大仕事のように見えてしまった。
otomisan

otomisan