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戦場にかける橋のボブおじさんのレビュー・感想・評価

戦場にかける橋(1957年製作の映画)
4.2
今から丁度81年前の今日、1943年5月12日、タイとビルマの国境に流れるクワイ河に夕陽に映える日本軍の巨大な橋が見事完成した。

この美しくも巨大なクワイ河の架橋〝戦場にかける橋〟を日本軍はいかにして完成させたのか。英・米・日、3か国の将兵が鉄道と橋をめぐって繰り広げる凄まじい死闘を描いた戦争映画。

この映画を観たことがなくても主題歌の〝クワイ河マーチ〟は、誰もが知っている名曲だ。(サル・ゴリラ・チンパンジーでお馴染みのあの曲😅)

1943年第二次世界大戦下のビルマ。日本軍の斉藤大佐(早川雪洲)を長とする捕虜収容所に、ニコルソン大佐(アレック・ギネス)率いる英軍捕虜が送られてきた。鉄橋建設を急ぐ斉藤大佐は、米軍のシアーズ少佐(ウィリアム・ホールデン)とともに建設現場で働くことを彼らに命令。工事は着々と進み橋は完成に近づくが、丁度その頃、同じ英軍の手によって橋の爆破工作が進められていた……。

巨匠デヴィッド・リーン監督が、第二次大戦を背景に戦争の愚かさと人間の尊厳を描き出した不朽の名作。日本軍と日本軍の捕虜となったイギリス軍が、架橋建設工事という一つの目的のために一致協力する。高い技術を持つイギリス軍捕虜は、リーダーシップをとり、橋梁建設に生きる意義を見出し苦役に耐えて見事、橋を完成させる。それはあたかもイギリス人のプライドの結晶のようであった。

クライマックスに向けて繰り広げられる、それぞれの駆け引きと心理的な変化。人間の尊厳と名誉そして戦争の無意味さを見事に表したラストシーン。いかにもイギリス出身のデヴィッド・リーン監督らしい演出が光る。


〈余談ですが〉
この作品も含めて戦争映画は全て切り取りだ。歴史的な事実はひとつでも、その事実をどう解釈しどう感じるかは、国や立場によって、もっと言えば人間一人一人まるで異なる。

当然インプットされた感情が異なれば、作品としてどう表現するかというアウトプットは千差万別だ。

この映画の見え方も見る視点によって当然変わる。日本軍の描かれ方が酷いと言う人もいるし、実際の犠牲者数を考慮すればあんな描き当てでは生ぬるいと言う人も当然いる。

中でも決定的に欠けているのがタイ、ミャンマー、マレーシアから強制連行された建設作業員達からの視点であろう。その犠牲者の数は数万人にものぼると言われている。

この映画は、1957年に公開されたアメリカの戦争映画で監督のデヴィッド・リーンはイギリス人である。彼はこの過酷なクワイ河木橋建設の話からアジア人労働者の存在を抹消し、英米人と日本人の話に特化して描いている。そしてそれは見事に成功し、本作は戦争映画の名作として歴史に名を刻んだ。今も昔も全ての戦争映画は、切り取られて作られているのだ。