掛谷拓也

岸和田少年愚連隊 望郷の掛谷拓也のレビュー・感想・評価

岸和田少年愚連隊 望郷(1998年製作の映画)
2.8
原作者中場利一の子供時代を中心としたストーリー。父親役に竹中直人、母親役に烏丸せつこ。祖父役に笑福亭松之助。僕は若いころ岸和田市駅近くで仕事をしていた時期があって、大阪南部の「だんじり文化(いってまえ文化)」が、大阪中心部や北摂文化との違いに衝撃を受けた。和歌山、姫路・加古川など兵庫県西部にも共通する漁民文化が岸和田、春木、忠岡には関西の古層として色濃く残っている。言葉、婚姻、子育ても独特。原作者の中場利一は80年代に「本の雑誌」の常連投稿者からキャリアをスタートし、バブル景気に湧く日本文化とは逆の古層に向かう方向を軽やかな文体で描いた。中場利一の子供時代の役に当時吉本興業所属「りあるキッズ」の長田融季。数年前にコンビは解散し、元相方の安田とも仲間割れ。長田は今年36歳。「りあるキッズ」の二人が時代とうまく折り合いがつけられなかった理由の一つが長田がこの映画に主演したことにあるかと思うと痛ましい。中場利一も数年前にファンの編集者と結婚し子供を設けたが、いつまでたっても変わらない中場に愛想を尽かし娘を連れて逃げた。変われない中場の世界観を懐かしいと思うファンもいるが周りにいる人は大変だろう。