ししまる

フェア・ゲームのししまるのレビュー・感想・評価

フェア・ゲーム(2010年製作の映画)
3.5
◼️概要
ダグ・リーマン監督による2010年の伝記ドラマ。米同時多発テロ後、ブッシュ政権はテロとの戦いを宣言、アフガニスタンに侵攻する。前後して、イラクが核の原料ウランをニジェール共和国から入手しようとしたという疑惑が浮上。CIAの依頼により元外交官ジョーは現地調査するが、事実ではないと判断。ジョーの妻、CIAの女性工作員ヴァレリーらも別の調査から、イラクの大量破壊兵器の存在や核兵器の開発疑惑を否定する報告書を提出する。しかしチェイニー副大統領のリビー首席補佐官がCIAに乗り込み、報告の信憑性を詰問。結局、ブッシュ政権はCIAの報告を無視してイラクを攻撃し、ジョーはニューヨーク・タイムズ紙に核開発疑惑の情報は捻じ曲げられていると寄稿する。リビーは世間の関心をそらすため、ヴァレリーがCIA工作員であるとリークする。
◼️キャスト
ヴァレリー:ナオミ・ワッツ、ジョー:ショーン・ペン
◼️メモ
タイトルは「恰好の的」や「いいカモ」という意味のスラング。
米国で起きた「プレイム事件」の当事者である元外交官ジョゼフ・ウィルソン並びに、その妻ヴァレリー・プレイムの回顧録に基づいている。
事件は2003年、当時CIA秘密工作員だったヴァレリーの身分を暴露され、身辺が危機に晒された一連のスキャンダルのこと。
CIA工作員の身分暴露は法律で禁止されているが、米政府が当時主張していたイラクによる核兵器開発についてジョゼフが否定記事を寄稿した報復とされる。
その後、リビー首席補佐官が起訴され2007年、禁固2年6ヶ月の実刑判決を受けたが、ブッシュは大統領権限で保護観察と罰金刑に減刑。2018年、トランプ大統領が恩赦にした。関与が疑われたブッシュ大統領のカール・ローヴ次席補佐官は起訴が見送られた。
プレイム事件をベースとする作品は、情報源秘匿をテーマとしたフィクション「ザ・クリミナル 合衆国の陰謀」(08)がある。
◼️感想
劇中の表現の正確さを巡っては議論があるが、21世紀に先進国で起きたことに改めて驚く。重厚なキャストと演技も素晴らしい。ただジョーがニューヨーク・タイムズ紙に寄稿してから、リビーが判決を受けるまでだけでも4年かかっており、108分の本作では物足りなさもある。
本作では、プレイム事件でもう一つの焦点となったマスコミの情報源秘匿を巡る話は省略されているが、本作に登場する記者連中はかなり胸くそ。
✳️再観賞
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