ねまる

ゲキ×シネ「朧の森に棲む鬼」のねまるのレビュー・感想・評価

4.2
『酒呑童子』の物語と、『リチャード3世』の物語がミックスされた構成。

舞台は(おそらく)平安時代頃の日本で、王になるために口先だけでのし上がろうとした男のストーリー。

落ち武者狩りをしていた頭のいい男は、王になるという野望を抱いていたが、剣術には長けていなかった。
そんな男はある日、朧の森の鬼と、王になれる代わりに自死をしようとしたら命をもらうという契約を結び、長けた口先と同じようによく動く剣を手にする。

このダークヒーロー・ライを演じるのは市川染五郎(現松本幸四郎)。松たか子のお兄さんですね。
よく動く剣に体がついていかない、を体現するところがさすが舞台の人って感じ。
どうしても、ずるい男が人を騙して蹴落としていく話が好きになれなくて、共感出来なかった主人公。

ただ、その他豪華なキャストの中でも出ずっぱりで完全に彼を中心に世界が回っていた。
徹底的なまでに悪になり、よりその深度を増していく様子が、共感は出来ないけど、かっこいいとさえ思えてしまうほどの迫力。

でも、私は、ライの弟分・キンタが最高だと思うなぁ!
演じているのは阿部サダヲなんだけど、他のキャストじゃ絶対に代えの効かない可愛らしさと愛くるしさとかっこよさ。
ダークヒーローとは真逆にいる存在だから、この作品が心を掴むんだよね。
うっは、阿部サダヲ!!!

そして、古田新太御大。
やっぱり劇団☆新感線は古田新太だなぁと改めて思わせてくれる迫力。
かっこいい。最初の登場シーンからもつ圧倒的でした。

ライを導き、そして揺さぶる三人の女。
高田聖子、秋山菜津子、真木よう子。
それぞれ違った役割を持っていてみんな素晴らしい。
真木よう子って美しいなぁ。舞台では、迫力弱めなんだけど、たくましい。

あとね、良かっと思うのは川原正嗣さんが演じていたアラドウジ。
川原さんってアクション監督だと思っていたんだけど、そういうシーンはなく、調子のいい男が魅力的だった。

大王の田山涼成も良かったし、粟根さんもいつもどおり良かったです。

雨が降る森の演出も圧巻で、今更言ってもしょうがないのだけど、生で観たらもっと凄かったんだろうなと思いました。
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