アランスミシー

ヨーロッパのアランスミシーのレビュー・感想・評価

ヨーロッパ(1991年製作の映画)
5.0
オールタイムベスト更新。
再びこの人間に自分の信念を汚された。
もう殺してくれよ、
未来も希望もない

帰ってきたヒトラーのような恐怖。
現実に起きたイタリア保守党復活。
死に際の母に実の父がドイツ人だと知らされたトリアーのショック。
ドイツ人はどうせまた繰り返すんだという諦念と絶望。
日本も保守層の動き見てると本質は変わらないような気がしてくる。

唯一の希望は全国民の積極的留学。
客観的な自国の歴史学習、そして現代に当てはめてそれが全人類の幸福という(決して自国に限定する事のない)観点で見て有益かどうか判断。

列車の前進or後退

国境を跨いだ客観的視座を持つ神の使いとして人類を救いにはるばる地上へ降りて来た主人公(神々のたそがれと類似)は両国のナショナリズム運動に挟まれ、ついに人間を見放す

ベルリン天使の詩、エレファントマンからの影響
ジャコヴァンドルマルへの影響
タルベーラ同様ニーチェら実存主義思想からの影響

ヨーロッパ3部作に限らずワシントン3部作含めトリアーの全ての映画に共通する、善意の主人公が救済のためにその地にやってくるがその状況の複雑さと自分の無力さに面食らうというプロット。
それはその時代の正義の陣営に所属してふんぞり帰ってる偽善者たちを「ユダヤ人だと思い込んでた自分が実はナチスの息子だったと発覚した自らのトラウマ体験」に引き摺り込むトリアーの目論み。
内情も知らずに批判しているだけでは再び同じ過ちが起きてしまうという教訓。
と同時にせっかくの他者からの援助を疎かにする視野の狭い元加害者ドイツ人民の愚かさに対する教訓。

【以下研究メモ】
《米軍》安全志向→挑戦志向
ドイツ人が自分たちの監視ナシに自らの反省によって自由に経済活動し自立した政治活動をする未来を受け入れられず、自分たちの支配下として収まり続ける事を強要しようとする安全志向

《人狼》安全志向→挑戦志向
ドイツ保守思想が失われてしまうという未来が受け入れられず、無謀な反乱テロ行為を起こし続けるという安全志向

《駅員》安全志向→挑戦志向
米国式の臨機応変さを受け入れられず、合理的でない過去のルールに縛られ、それが壊される事を恐れる安全志向

《主人公》
上記の三つ巴に挟まれた聖人