アーリー

秒速5センチメートルのアーリーのレビュー・感想・評価

秒速5センチメートル(2007年製作の映画)
3.8
2023.5.8

今作を観るのは何回目やろう。なんとなく「君の名は。」以前の新海誠の代表作みたいな雰囲気がある。

山崎まさよしのワンモアタイムワンモアチャンスが良すぎる。それに尽きる。もはやこの1時間はその曲のMVと言えるぐらい、それぐらい印象に残る。あと天門の想い出は遠くの日々。切なさの中に懐かしさと悲しさが混じったノスタルジックな曲。昔の楽しかった日々を思い出してしまうような曲で、主人公たかきの心情とマッチしている。

前作「雲の向こう、約束の場所」でも触れた、初恋に関するお話。それまであったSF要素をがっつり減らして、日常をフィーチャーした内容。初恋をいつまでも引きずる男と、現実をみる女性。確かに女性は1番好きな人ではなく2番目に好きな人と結婚するのがいいという話をよく聞く気がする。1番好きだった人との想い出を特別な場所に保管し、たまにそれを覗いては、その日々にタイムスリップする。でも長居することなく、しっかり鍵をかけて今いる大切な人との日々に戻る。ちゃんと今と想い出を両立できる。男よりも女性の方がそういうの得意な気がする。ちゃんと管理できるというか。男の方がその管理下手な気がするな。

たかきの醸し出す雰囲気が、ラノベの主人公みたいでちょっときつい。他の人の感想にもある通り、ナルシズムを感じる。ずっと好きな女の子がいて、離れ離れになってしまって苦しい自分に酔っている感じ。中二病を引きずったまま大人になると碌でもないんやな。ただラストで見せた笑顔に希望を感じる。久しぶりにあんな素直に笑顔になれたんちゃうかな。あの踏切であかりとすれ違い、思わず振り向くがそのタイミングで電車が通過する。通り過ぎた後、あかりはもういない。振り向いたまま動けないたかきと、もしかしたら振り向きもしなかったかもしれないあかり。両者の違いが如実に現れるシーン。あかりが自分を引きずっていないことを悟ったたかきが、そのあとあんな笑顔をみせたのは、もう2人の人生は交わらないことを悟った上で、やっと次をみることが出来たからかな。辛い現実を目の当たりにすると、逆に吹っ切れる感じ。何もわからない状態よりも、もう可能性はないとはっきりしたことで、逆に前向きになれた。

あんなロマンチックな想い出を作っといて引きずらん方がおかしいのかもしれん。スマホどころか携帯すら持ってないのが惜しかった。それさえあれば、まだチャンスはあったのに。

新海誠作品はずっと夏の青空のイメージがあるから、今作は桜と雪が印象づけられてて新鮮。映像のレベルがどんどん上がってきてる。ポエムのようなセリフも健在。変にリアルな恋愛アニメ。女の子がこれを観てどう思うのか気になる。たかきのことを気持ち悪いと思うんかな。はたまた、こんな繊細な恋愛してみたいとなるのか。俺はしっかり作品の雰囲気に浸ることが出来た。面白いというよりは観て良かったなとなる作品。
アーリー

アーリー