Breminger

秒速5センチメートルのBremingerのレビュー・感想・評価

秒速5センチメートル(2007年製作の映画)
4.9
ぶっささった…。
観てる時に何回も「あ、泣いてまう」ってなるくらいの未体験な青春を60分、3つのストーリーで味わえるだなんて…。

幼少期から中学生の頃までの読書好きというきっかけで生まれた縁が長距離の文通になり、彼女の元へと会いにいく。
その道中にファンタジーはないものの、大雪で交通網が遮断されて、行けるかどうか分からないというリアルさが胸にくる。
それでもめげずに辿り着いた先にいた彼女の姿にはほろっときてしまった。
特大のおにぎりにフフッとなり、木の下のシーンにはキュンとなり、感情がおかしくなりそうだった。
お別れのシーン、多くは語らずまた会おうの約束。これ20分も無いストーリーのはずなのにとんでもなく濃厚だった。

高校生になって、違う土地へ移った少年はまだあの日あの時の彼女のことを思いながら将来を憂いて、そんな彼に恋をする少女の姿が愛おしい。
過去を思う少年と、今に焦る彼女の鏡写しのような日々にカブの運転の疾走感が純度高めの青春がそこにあった。
草原を引いて映すショットなんかは「すずめの戸締まり」に通ずるものがあったなぁとしみじみした。

最終話では現実ど直球。
社畜の彼と幸せを手に入れた彼女。
結局すれ違ってしまったんだなという虚しさと共に東京という街ですれ違ったりする偶然はありつつも、運命的な再会は全くないまま空を見上げて終わる締め方と共に流れる「One more time,One more chance」がこれまた沁みる。

それになぞらって流れる"これまで"と観客に委ねた"これから"に深く浸ることによってより叙情的になれる。

新海監督の美麗な背景は今作でもすでに培われており、少年少女の物語の尊さも全開だった。
やはりこの方が日本を背負うアニメーターになってくれて感謝しかない。出会えて良かった。
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