オッポロゲンガー

秒速5センチメートルのオッポロゲンガーのネタバレレビュー・内容・結末

秒速5センチメートル(2007年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

劇場鑑賞は初めて。
最初に見たのは15年程前、中学からの男友達と酒を飲みつつ、解説されながら。
当時は片思いの連続で、鹿児島の彼女に感情移入してコスモナウトが一番胸に響いていた。男友達の「たかきは未練ったらしいキモイ男なんですよねぇ~」と言う彼の意見に同意して、たかきアンチだった。
最後に見たのも数年前。当時交際していた男性と酒を飲みながら。最終章のタイトルバックで泣けて泣けて仕方なかった。
シラフで秒速を見たのは今回が初めてだった。
豪徳寺。東京に住んでいた頃住んでいた頃、近くに住んでいたし、地元に帰ってから当時の彼氏の家に行く時、夜行バスで新宿駅で降りて、小田急で豪徳寺まで行き、明け方世田谷線の始発を待っていた。
遠く離れてから、秒速の舞台の傍で暮らしていたのだと気付いた。
三十も半ばに差し掛かり、東京で暮らすたかきの「栃木って、遠いよな」というセリフが、彼がいかに幼く保護すべき対象なのかと頭を殴られた気持ちだった。
東北出身だから雪は身近な私でも、行方を閉ざされる事の恐怖と閉塞感はよく分かる。初めて新宿駅に一人で降りたという中学生からしたら、どれ程恐ろしかった事だろう。
「どうか帰っていてくれ」という優しさに、胸が苦しくなった。
高々十年そこらで、何もかも気が合う少女との出会いと別れ、そしてあんな大冒険の末再会を果たしたら、そりゃあ忘れられる訳ないよな。
あの鹿児島のサーフィン娘も告白したら付き合えてはいたかもしれない。
INFOBARつかってる東京の彼女も、大切にしようとしていたんだと思う。
多感な時期にあんなに大きく心が動いた経験をしたら、簡単に他の誰かを好きになるなんてできないんだと思う。
あかりが薄情なのではない。
心の成長のスピードには性差は確実に存在して、ラストシーン、あの遮断機のシーンで漸く彼は踏み出せたんだろうな。
まだ20代そこらっしょ?若い若い。全然、普通の成長。
成長の物語なのに、後に残る物悲しさとか、切なさはなんなんだろう。自分にそういう瑞々しい成長がもう訪れないと気付いたからだろうか。

コンビニのタイトルバックのシーンをスクリーンで見れて良かった。パックの飲みものをくしゃっと潰して、できた心の隙間に風が通り抜けるような気持ち。
新海誠の作品の中で、やっぱり一番好きだなあ~と春を噛み締めました。