Automne

ラスト サムライのAutomneのレビュー・感想・評価

ラスト サムライ(2003年製作の映画)
3.6
小雪様が美しすぎた…。
渡辺謙はいろんな映画で武装した僧侶の大将やりがち、トムクルーズは着物と鎧のコスプレできて楽しそう。
時代考証とかちぐはぐだしツッコミどころはたくさんあるけれど、"アメリカ人の考えたいちばんカッコいい日本"が丁寧に描かれていたのでファンタジーとして満足。
史実では戦略含め長篠の戦いあたりで銃火器革命は始まっているし、あくまでも弓にこだわったのは黒沢映画へのリスペクトか。
辞世の句、結局下の句思いつかずに英語喋って死ぬんかいって思ったけどラストの戦場シーンとかはど迫力だったし雰囲気雰囲気って感じで楽しめた。
負けると分かってて戦うこと、潔く散って死ぬことが武士道やハラキリとつなげられて欧米ナイズされがちなのだが、併せて語られるカミカゼ特攻は明治以降の新政府から出てきた思想(天皇=神として大衆に崇めさせて利用すること)によるものだから、本来の切腹や武士道的な意味合いからは少しずれているということを指摘しておこう。
そもそも江戸より以前の戦ではそこまで死人は出なかったし、それぞれ理知的に戦っていたのであり、切腹は変に死を美化しているというよりは、分かりやすく言うと"落とし前をつける"という意味で扱われることが多かった(秀吉の中国地方大返し然り)。その点の混同がやはり見られる。明治維新前と後でがらっと日本は変わったのだが、そのあたりを踏まえていないと切腹や武士道と、政治利用された天皇神格化の玉砕との精神性の違いは伝わらないだろう。その点『葉隠』的な武士道を見るとしたら漫画『シグルイ』を断然おすすめする。死に狂うという文字通りの意義でないことが理解できるはず。
ただそもそも時代考証ちゃんとした作品が良いものになるのか?という問題もある。だとしたら、やはりライト層にも伝わるように、漫画ナイズされたファンタジー日本として伝えていっても全然構わないのではないか、とも思う。それはそれでファンタジーとしての面白みがあるから。
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