Hiroki

バットマン ビギンズのHirokiのレビュー・感想・評価

バットマン ビギンズ(2005年製作の映画)
4.0
ザ・バッドマンへの道はついにノーランバース(ダークナイト・トリロジー)へと突入します。

前回の『バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲』の大失敗によって完全に失墜したバッドマンブランド。
その後ワーナー・ブラザーズは『Batman:YearOne』『Batman:Beyond』『Batman vs. Superman』など数々の企画をするものの中々制作には至らず。

そこで現れたのが『メメント』の成功によりハリウッドにその名を轟かせていたクリストファー・ノーラン。
彼が目指したのはバッドマン誕生からトリロジー(3部作)でリブートし、これまでの明るくファミリー向けのコメディ寄りの作風からダークでリアリティを重視したヒューマンドラマ寄りの作風に作り変える事。
ちなみにこのノーランバースの大成功により、ハリウッドではリメイク(過去作を参考に作り直した映画)ではなくリブート(同じ原作やキャラクターなどをベースに新たな視点で作り変えた映画)が流行していく事になります。

今作を観ていて思うのが、とても007の匂いがする。ブルース・ウェイン(クリスチャン・ベール)がジェームズ・ボンドに見えてくるんですよね。
それもそのはず、大の007ファンのクリストファー・ノーランはこのトリロジーを作るにあたって007(特に『ロシアより愛をこめて』)を参考にしたらしい。
しかも今回のスーパーヴィランの1人であるラーズ・アル・グール(リーアム・ニーソン/渡辺謙)というキャラクター自体が女王陛下の007に影響を受けて作られた。
まーそーなると007の匂いがするのもあながち間違いではないのかな。
ラーズ・アル・グールって良いキャラしてるのに映画だとこれにしか登場しない。確かに他のキャラに比べると少しインパクトには欠けるのかも…

前回までスーパーヴィランに押されに押されまくって影の薄かったブルース・ウェイン/バットマンがついに今作では主役にカムバック。
そして“ビギンズ”の名の通り始まりの物語。
幼い頃から両親の死、修行をしてゴッサムへの帰還とかなり長尺に渡ってブルース・ウェインがどのようなバットマンになっていくかが丁寧に描かれている。
やはりバットマンにとって二重のアイデンティティ、ペルソナとアニマを描く事は非常に重要な要素。
トリロジーを作る上でもこの「なぜ彼がブルース・ウェインではなくバットマンとして悪と戦う事を選んだのか」が今後に影響してくる。
そして“正義と悪のボーダー”という要素もここで軽く植え付けられたものが、後々に伏線となって効いてくる。
そー考えると以降2作のための“種まき”的な役割の強い作品のような気がする。
もちろん単体としても面白いけど。

アルフレッド(マイケル・ケイン)、ゴードン(ゲイリー・オールドマン)、フォックス(モーガン・フリーマン)という名脇役がしっかり活躍しているのもバットマンファンとしてはとても嬉しい。
3人の名優の演技も素晴らしいし、とくにフォックスはコミックでは重要キャラなのにこれまでの映画では無視されてきたキャラ(まー完全に007のQなんですけど…)なので登場には歓喜した記憶があります。
そしてヒロインの描き方もこれまでとは変化していて、オリジナルヒロインのレイチェル・ドーズ(ケイティ・ホームズ)は強く誇り高い検事補で、彼女はただ守られるだけの存在ではなくヴィランのスケアクロウ(キリアン・マーフィー)をスタンガンで撃退したりします。
ここらへんの描き方は新しくてとても良かった。

あとはノーラン組常連の音楽=ハンス・ジマー、撮影=ウォーリー・フォスター、編集=リー・スミス、美術=ネイサン・クロウリーというノーランの頭の世界を完璧に再現する職人集団によって全体が洗練され、過去の作品からワンステージランクが上がっている。

ちなみに今作にちょっとだけ出演している渡辺謙をノーランが気に入り『インセプション』は直接オファーの電話をしてあの重要な役が決定したというきっかけの作品でもあります。

さてトリロジーが決まっているのでラストでクリフハンガーが登場したように次はみんな大好きダークナイトです。
もー何回かわからないくらい観ていますが、何度でも観ます!

2022-25
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