イチロヲ

自由の幻想のイチロヲのレビュー・感想・評価

自由の幻想(1974年製作の映画)
4.0
日常の中に潜んでいる非日常性を、オムニバス形式で描いている風刺コメディ。前衛表現を駆使したエピソードが連続していく作風になっており、「モンティ・パイソン」の不条理スケッチを想起させられる。

風景写真に興奮する上流階級の夫婦、性的抑圧に負けてしまうマゾヒストの宗教家、幼稚な憲兵に新生活の在り方(トイレで食事をとり、食堂の便器で用を足す)を説く教授など、全方位を小馬鹿にするスタイルが取られている。

「ナポレオン軍の兵士→公園で遊ぶ子供→子供の両親→夫の掛かりつけの医師→医師に雇われている看護婦→看護婦が宿泊するホテルの客」というふうに、中心人物が次々とバトンタッチしていく感覚(キャラが転生している?)が、とにかく面白い。

要するに、人間は「自由」の中から、自己の倫理観に基づいた選択をおこない、日常を送っている、ということ。原題の直訳「自由の亡霊」が言い得て妙であり、倫理観から生み出された悲喜交交に滑稽を見いだすという、風刺コメディの根源を痛感させられる。
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