ひろぱげ

オーメンのひろぱげのレビュー・感想・評価

オーメン(1976年製作の映画)
4.5
「エクソシスト」と並ぶ悪魔系ホラー映画の金字塔にして、オカルト映画の元祖とも言うべき傑作。これまで何度も何度もテレビで見てきたけど、スクリーンで見るのは初めてだった。(ありがとう試写会)

「666」の痣とか、黙示録の予言とか、悪魔崇拝とか、様々なアイテムをふんだんに盛り込んでいて、悪魔というものに馴染みの薄い東洋人のおれたちにも「なんかヤバそう」という雰囲気をたっぷりと味わわせてくれる。

イタリア駐在アメリカ大使ロバート・ソーン(グレゴリー・ペック)は、ローマで若き妻が産んだ子が生後まもなく死んだと知らせを受ける。カトリック系の病院に着くと、ちょうど同じ頃産まれ、母親は死んでしまったという赤ん坊を養子にしないかと持ちかけられ、妻に内緒でそれを受諾してしまった。
やがて駐英大使に栄転し、ダミアンと名づけられたその赤ん坊もスクスクと成長、妻もダミアンを可愛がり、全てが幸せだったソーン家。ダミアン5歳の誕生パーティの最中、惨劇が起こってからというもの、不吉で不穏な出来事が続く・・・。

「エクソシスト」が悪魔憑依系なら、こちらは悪魔による家族乗っ取り・崩壊系。
前半は次々と起こる惨劇と、それに巻き込まれていくうちに我が子が信じられなくなっていくソーン夫妻が描かれ、後半は、ロバートとカメラマン ジェニングスによるとんでもない「ローマの休日」(グレゴリー・ペックだけにね)といった感じ。オープニングから怒濤のクライマックスと不気味なエンディングまで、息を呑みっぱなし。ストーリーテリングが上手いよね。
役者の顔がみんな怖いの。ベイロック夫人を怪演したビリー・ホワイトローを筆頭に(この人の誕生日がなんと6月6日!)、ブレナン神父役パトリック・トラウトン、ジェニングスのデビッド・ワーナー、妻キャサリンのリー・レミック。そしてダミアンを見事に演じた子役ハーヴェイ・スペンサー・スティーヴンス。みんなイイ顔。

しかしなんといっても音楽!!本作で第49回アカデミー作曲賞受賞の栄誉に輝いたジェリー・ゴールドスミスによる壮麗で効果満点のサウンドトラックは、この映画の魅力の半分くらいを占めていると言っていい。
「Omen」とは「前兆」という意味なわけだけど、恐ろしい事が起こる前には必ず不穏で不吉な音楽が鳴り始め、それが最高潮に達した時が誰かの死である、というパターンなのだ。
オーケストラによる現代音楽的要素(弦楽器のグリッサンドやスルポンティチェロ、不協和音などなど)を巧みに用い、ラテン語による「Ave Satani(悪魔礼賛)」の歌詞を時に宗教音楽のように荘厳に、時に狂気じみて、時に囁くように変幻自在に歌うコーラスを重ねる。見事としか言いようがない。
この作品のおかげで、合唱が何かラテン語で歌っているオーケストラ曲(「カルミナ・ブラーナ」とかね)を聞くと怖い思いをしてしまう人も少なくないのでは?と思われる。

このサントラが大好き過ぎて、何度も何度も聴きまくっていたためか、映画自体の音響が思ってたより良くないと感じてしまったのはちょっと残念。ま、50年近く前の作品だもんなあ。音だけでもリマスターしてくれないかな?

本作のストーリーに至るまでを描いた「オーメン・ザ・ファースト」が間もなく公開。こちらも気になります。
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