Monisan

8 1/2のMonisanのレビュー・感想・評価

8 1/2(1963年製作の映画)
4.2
観た。

フェデリコ・フェリーニ作品、初めてかもしれない。
人の配置や歩き方、衣裳、美術等、丁寧にデザインされたモノクロの映像は、芸術的なのにどこがチャーミングで好き。

登場人物も美男美女もいれば、わかりやすく個性的なキャラクターもいて役周りが分かりやすいキャスティング。

お話は、映画制作までの舞台裏を監督であるグイドの苦悩と共に描いていく。
キャストの候補者は、自分はどの役なのか?と詰め寄り、プロデューサーは宇宙船制作の予算の話を他から言われながらグイドに撮影開始日を決めろと迫り。制作部は寝てない、みたいなシーンもリアルな舞台裏。
イルマ・ヴェップとかも本作に影響受けていそう。

グイドは枯れたひらめき、と妻や浮気相手らとの人間関係に悩む。
多くの後世の映画監督達がこの映画をベストだ、と答えるそうだけど納得。作り手からしたら誰もが通る道なんだろう。

母に可愛がって、多くの愛を注がれていた子供時代の回想。ベッドでバタバタしている所に布団をかけてもらう。幸せな記憶。共感した。

現場に来た、妻。あれだれ?からの、寝室でのやりとり。反対方向に顔を向けての口喧嘩。埋まらない溝。ここも共感。

理想郷のような全ての関わってきた女性の住む家。これは共感してはいけないんだけど、気持ち分かる。男が抱いてしまう妄想の一つの完成形。
子供の時してもらったようにシーツに包まれて運ばれる所とかね、幾つになっても心のどこかにいる少年の自分。無くしたくない幼さ。

新たに惚れたクラウディアにも詐欺師呼ばわりされて、半ば強引に発射台の前で開かれた記者発表。逃げ場の無い質問責めに、右のポケットに入れてあるよ、と言われた拳銃を手にする。

ラストの一連のシーンは掴まれたなぁ。
チンドン屋的な道化師達の歩き方や、最後に少年時代のグイドかな、この辺り寺山修司も影響受けているんだろう。
グイドの台詞「人生はお祭りだ。一緒に過ごそう。」からの登場人物達が手を取り合って輪になって踊る、正に大団円。
踊りもチャーミングで、グイドと妻ルイーズが輪に入った瞬間、グッて声が出てしまった。良い。ラストの少年も。

美しくて、切なくて、でも勇気ももらえて。とても観て良かった。

フェデリコ・フェリーニ、脚本・監督
Monisan

Monisan