こさじんがーぐる

月は上りぬのこさじんがーぐるのレビュー・感想・評価

月は上りぬ(1955年製作の映画)
2.0
笠智衆と美人3姉妹、それから画になるお屋敷。飯が何杯でもいけるやつだ。

いちばん目立つのは末の娘の北原三枝。
でも、中盤から急にしおらしく縮こまってしまったのは残念。明るくてかしこくてチャーミングな女性が、家父長制の枠に押し込められてしまう。「おれがうんとかわいがってやる」と男に言われて涙を流すなんて、つまらない。
そこに批評性があったら、ずっとおもしろかった。

詩吟(というのかな?)のシーンが冒頭から数えて3度も登場するのはいい。
だけど、若い男女が月を眺めながら互いの思いを確かめ合うシーンはどうだろう。1回めの杉葉子たちの時には「ああ、月は上りぬだな…」という叙情性があったのに、北原三枝たちまで全く同じシチュエーションで興ざめしてしまう。

監督の田中絹代が女中役をしていて、廊下の拭き掃除をしているところなんて、これ見よがしな感じだ。一流の自意識がそうさせているように思った。それならそれで、中盤で退場させなければいいのに。