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月は上りぬのeulogist2001のレビュー・感想・評価

月は上りぬ(1955年製作の映画)
3.8
お転婆だったり奥ゆかしかったり、控えめであったり。
1950年代の恋愛の一端が偲ばれる。今となっては明らかに性差別となるような表現や行動様式にも見えるが、その実、相手への深い配慮がほの見える。表面的な言い換えや言葉じりなどの撤廃は進んだが、その底にあるお互いの謙虚さや奥ゆかしさのようなものまで一掃してはいないか。

結局は制度や構造的な問題に目を向ければだ解決されるとは限らず、大事な根っこまで引き抜いてしまうこともあるような気がする。もちろんそうした見方や感じ方も時代の「文化」といえばそれまでなのだが、こうした昭和の作品を見る度に少し寂しい。

ところでさだまさしの「関白宣言」はこの作品を底本にしていたのだろうか。時代からすれば、彼も必ず観ていたに違いないのだが。

田中絹代さんは役者としても監督としてもすばらしい。素人目にも役者の片手間の仕事ではないのはあきらか。
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