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月は上りぬのSPNminacoのレビュー・感想・評価

月は上りぬ(1955年製作の映画)
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三姉妹の末娘節子は、2番目の姉綾子と素敵な雨宮さんを結婚させようとするお節介なキューピット。でも自分の恋心には素直になれず…と、ちょっぴりジェイン・オースティンを思わせるロマンティック・コメディ。
大きな邸宅からロケーションまで、高低差や勾配のある舞台の活かし方が巧かった。そこを駆け足で動き回り、先走ってつまづく北原三枝がすごくキュート。また、脚本が小津だけど、田中絹代監督は女優の演技をとても魅力的に見せていたのが印象的。特に表情豊かな手のショットが良い。気持ちを隠して自分の首元に回した両手、障子の穴から出た手、そして2人の繋いだ手。
恋と同時に、今いる奈良から東京に行きたがる節子の思いが並行してるのも巧い(それには結婚相手が必要、というのが時代だが)。たぶん、月が上るのと上京をかけてある。月夜の恋人、嘘の電話と電報で送る暗号恋文、モーパッサンと万葉集、洋装と和装、古典とモダンを程よくブレンドする洒落たセンス。田中絹代演じるお手伝いさんと三枝の電話作戦の件りは、掛け合いが見事ですごく可笑しい!
しかしまあ、なんとおっとり優雅な暮らしぶり。大きな家と大きな犬、お手伝いさん、ご馳走といえばすき焼!肉屋の看板に牛と豚(本体)が描いてあるの、今じゃもう見ないよなあ。
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