ペコリンゴ

ハリーとトントのペコリンゴのレビュー・感想・評価

ハリーとトント(1974年製作の映画)
3.6
記録。
老人と猫。

猫映画、あるいはロードムービーの傑作として名高い作品。監督はキューブリックの『恐怖と欲望』等に出演したポール・マザースキー。

妻に先立たれマンハッタンのアパートで愛猫トントと共に暮らす72歳のハリー。区画整理によるアパートの取り壊しに常々反対してきたものの、遂に強制退去させられてしまう。面倒を見ると申し出た長男夫婦との同居に居心地の悪さを感じたハリーは、トントを連れて娘の住むシカゴを目指す長旅に出る…。

それほど劇的な展開を持つわけではない。それはもう、ゆったり、まったりした時間が流れる作品だ。

どちらかというと頑固で意固地なところのあるハリーが迎えるちょっとしたピンチや回り道。その中で訪れる幾つもの出会いと別れ。なんていうか人生の縮図みたいで、淡々と立ち回るハリーとトントを見てると、一息ついて落ち着いていこうやって言われてるような気がしてくる。

ハリーを演じ、オスカー主演男優賞を受賞したアート・カーニーは当時50代。役と実年齢の乖離からオファーに対して消極的だった彼にマザースキーが言ったのは、オスカーが獲れるぞといった旨だったらしい。これがホントになったわけだ。

劇中で見るハリーは50代には見えないし、このキャラクターを見る為にこの映画があるといっても過言じゃない。本作はカーニーの名演あってこその作品と言えるだろう。

まぁ正直、現時点で心から素晴らしいと感じれたかというとそれは違う。だけどもっと歳を重ねてからまた観たいなって思わせる引力がある作品だ。きっとその時は今とは違った感じ方をもたらすのだろう。