TOMJFK

存在の耐えられない軽さのTOMJFKのネタバレレビュー・内容・結末

存在の耐えられない軽さ(1988年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

完成度の高い芸術作品!

タイトルとは裏腹にとても存在感のある映画!
「173分=2時間53分!?」という長さを知り、驚きましたが一気に観れました。
DVDのエロティックな表紙から、また冒頭からのHな描写から、いったい何がテーマなのか・・・考えながら観ましたが、観終わって、これは政治や人間そのものを描いた傑作だと思いました。
またチェコやスイスの映像が非常に綺麗です。
なかなか完成度も高く、無駄な展開が無く、それでもこれだけの時間になるということは、かなり内容が濃いのでしょう。
退屈せずに一気に観ました。
また、ショッキングな描写や会話、監督の演出が光ります。
★プールでのテレーザ~水泳教室の光景が一瞬にして、夫:トマシュが全裸の女性達を指導している悪夢の光景に。
★チェコのダンスクラブで若者達が楽しんでいると、ソ連の高官と同行している自国の政治家が、ミュージシャンにソ連賛美の曲を演奏させ、若者達が白けるシーン。政治弾圧が若者に向けられるリアリティある場面でした。これって名画『カサブランカ』に似た場面がありませんでしたか?
★100人以上の死者を出したと言われる、ソ連軍の軍事侵攻(チェコ事件)。戦車の登場がカラーから白黒になり、実写と映画が見事に合体される演出。1988年映画の特撮としては見事です。
その中で正義感からカメラのシャッターを押しまくるテレーザですが、なんと、その写真を利用されて、活動に参加した市民が軍部に吊るし上げられるとは!
★終盤、トラックでダンスパーティに向かう一行。雨が降り出し、遠くで雷が鳴り出す。「この不穏な雰囲気は何?」と感じましたが、答えはラストに用意されていました。
悲劇のラストを暗示していたんですね。この辺の演出もさすがです。

以上、監督の演出が光り、主演のトマシュ、テレーザ、画家のサビーナの3人には、観ているうちに愛着が生まれますが、反面、私はこの映画のSEX表現が好きになれませんでした。
このような露骨で赤裸々な表現でなく、もっと表現を抑えた方が効果的だったように思います。
BGMにバイオリンを使用し、赤裸々で欲望丸出しのSEX表現は、観ていて下品な感じもしたし、白けてきました。
個人的には、この辺の部分をカットして、高く評価したい芸術的な傑作映画なんです。
そして、やはりラストが素晴らしい! その描き方。
先にアメリカに渡ったサビーナを登場させ、2人の結末を観客に伝え、そして人生最高の幸せな時間を過ごす2人を描く。
この演出、好きです!
『ライフ・イズ・ビューティフル』や『ただ君を愛してる』の表現を彷彿とさせます。
観終わって、「人間の幸せとは」と感慨深いものがあります。
余韻が残り、このようなラストを迎える映画とは、想像出来ません。
ということで、全体的にはかなり高く評価できる名画だと思います。
2010/2/23
TOMJFK

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