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スパイダーマンのYYamadaのレビュー・感想・評価

スパイダーマン(2002年製作の映画)
3.9
【マーベル・シネマのススメ】
・SONY'sスパイダーマン・ユニバース①
〈サム・ライミ1〉
◆監督:
 サム・ライミ 
◆ヴィラン:
 グリーン・ゴブリン
 
〈本作の粗筋〉
・両親を早くに亡くし伯父夫妻と暮らす、内気な高校生ピーター・パーカー。ある日、社会見学でコロンビア大学の研究室を訪れ、偶然にも遺伝子操作された「スーパースパイダー」に噛まれてしまったピーターは、壁に張り付き、糸を放出し、肉体も強化される超人的な力を得る。
・私利私欲のためにその力を使ったピーターだったが、自分のミスから愛するベン伯父さんを失うことになり、力の代償を深く受け止めたピーターは正義のために尽くすことを決意、「スパイダーマン」として自警活動を始めるが…。

〈見処〉
①運命を受け入れろ!
・『スパイダーマン』は、マーベル・コミックの同名のキャラクターをベースに2002年に製作されたスーパーヒーロー映画。監督は『死霊のはらわた』のサム・ライミ、脚本は『ジュラシック・パーク』のデヴィッド・コープが務める。
・「大いなる力には大いなる責任が伴う」。本作は、青年ピーター・パーカーの成長を描き、20世紀フォックスの『Xメン』シリーズと並び、アメコミ原作によるブロックバスター映画の先駈けとなった重要作。
・公開から約20年が経過した2021年12月に米バラエティ誌による「スパイダーマン」劇場公開9作品のランキングを発表。シリーズ集大成の最新作『スパイダーマン/ノー・ウェイ・ホーム』を抑え、「シリーズ全作品のなかで、もっとも純粋に楽しめる映画」と本作が栄えある1位に輝いているのが、その証拠である。

②苦難の映画製作
・アメコミ界のスーパースター、スパイダーマンの実写映画化構想は、古くは1970年代まで遡るが、当時はニューヨークの摩天楼を空中闊歩するシーンの撮影は実現不可能とされていた。
・しかしながら、90年代に入り、ジェームズ・キャメロンが監督候補と噂されるほど「CGによる技術革新」と「コミック不況によるマーベルコミックの倒産」によって、スパイダーマンの実写化の実現度が大きく加速。
・後者では、1997年に後継会社として設立された「マーベル・エンターテインメント」が再稼働するも振るわず、利益確保のため「マーベルキャラクターの包括的映像権」を2,500万ドルにて、各配給会社に商談に掛けられるが、アイアンマン、ブラックパンサー、ソーなど当時の「二軍キャラクター」は見向きもされず、「ハルク→ユニバーサル」「Xメン、ファンタスティック・フォ-、デアデビル→20世紀フォックス」「ブレイド→ニューラインでシネマ」と切り売りによる権利売却。
・ソニーピクチャーズは、マーベル・ヒーローのなかで数少ない「一軍キャラクター」スパイダーマンの映像化の権利を1,000万ドル+マーベルに対する「興行収入の5%」「グッズ販売利益の折半」の条件にて獲得。
・しかしながら、不可能とされていた映像化のため、ソニー・ピクチャーズは更に多額の製作費を余儀なくされ、ヒットが保証されないアメコミ作品に対して、『タイタニック』による当時最大の製作費2億ドルに迫る1.4億円を拠出することになる。
・また、撮影中に機材が崩れる事故によりスタッフ1名が死亡する惨事に加え、2001年9月11日に「米国同時多発テロ」が発生。多くのシーンに映っていた「世界貿易センタービル」をすべてCGで消去しなければならず、劇場用特報や先行ポスターも急遽差し替えられるなど、完成も危ぶまれる事態に陥った。
・このように苦難の連続であった本作であったが、2002年5月3日に米国公開を迎えると、最初の週末で1億ドルに達した初の映画となることを皮切りに、当時のアメコミ原作映画の中で最も成功した作品となった。本作こそが、『アベンジャーズ』など、現在のアメコミ映画の隆盛を築いたヒーロー映画の最重要作品である。

③結び…本作の見処は?
アメコミ映画の「教科書」作品。
◎: サム・ライミ監督による丁寧な演出は、「ヒーローの誕生」「失意の代償」「ヒーローの自覚と覚悟」とヒーロー映画のパッケージモデルとなる。また、後年の『スパイダーマン/ホームカミング』が、スパイダーマン誕生の逸話を割愛出来たのは、世間に認知度の高い本作の恩恵である。
◎: 本作序盤に描かれるベン叔父さんの最期のシーンは「大いなる力には大いなる責任が伴う」ヒーローの矜持 を問う、アメコミ作品最重要シーン。
○: 高いレベルで正悪両方を演じられる男、ウィレム・デフォー。本作のデフォーは「ジキルとハイド」「ゴラムとスメアゴル」ばりに狂気の二面性を見せる。アメコミ映画最高のヴィラン俳優。
○: 公開時に最も賛否両論を受けたアメコミ映画のヒロイン、キルスティン・ダンストであるが「Girl Next Door」を地で行くキャラクターを好意的に受け止めたい。
▲: 当時は革新的であった本作の特殊効果も、現在の技術水準ではPS-5並み。グリーンゴブリンの飛行シーンなど、随分と時代を感じてしまうのは、致し方なし。
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