空海花

激動の昭和史 沖縄決戦の空海花のレビュー・感想・評価

激動の昭和史 沖縄決戦(1971年製作の映画)
4.2
突然お休みしてしまい申し訳ありません🙇
例のごとくまた体調を崩してしまいました。
回復中だと思いますので、ぼちぼちまたよろしくお願いします🥲
今回の件はコメント欄に簡単ですが記載します。
本作、具合の悪い時に観るのは人にはすすめませんが、私は夏にはやっぱり戦争映画を観ます。
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太平洋戦争末期、沖縄戦を舞台に
十万の軍人と十五万の民間人の運命を描く。
[東宝8・15シリーズ]第5弾
監督 岡本喜八
脚本 新藤兼人
撮影 村井博

1942年8月のガダルカナル上陸から
44年7月サイパン陥落まで、
実映像のダイジェストが入る。
1944年、沖縄32軍に新司令官として送り込まれた
士官学校校長で温厚な人格者、牛島中将(小林桂樹)
沖縄で迎えるのは豪傑型の参謀長の長少将(丹波哲郎)
冷静な秀才型の高級参謀八腹大佐(仲代達矢)
彼らがメインとはなるものの
“県民一丸となって”決戦に挑んだ沖縄
劇中では軍人から民間人までのエピソードが
オールキャストで事細かに組み込まれ、短いながらもそれぞれが人間らしい強烈な印象を残していく姿に鳥肌が立つ。
こんなに短いシーンで
こんなに強い演技ができる俳優がこんなに居ることにも驚く。もちろん演出もあるのだろうが。
今を激しく憂いてしまう。

あまりにもエピソードが多いため、
掘り下げが足りないというきらいもあるかもしれない。
また劇調な演出が苦手な人もいるかもしれない。
同監督『日本のいちばん長い日』の濃密な1日の劇ドラマとは真逆で、ダイジェストのように細分されているのも好みは分かれるかもしれない。
しかしいったい何カットあるのだろう。細かいショットで怒濤の勢いで繋がれていく映像に脱帽。
秒コンマの緻密なコンテによるようだ。

戦艦大和、特攻隊
学徒兵、鉄血勤皇隊、ひめゆり部隊、
南風原陸軍病院、集団自決…
沖縄戦で思い浮かぶものが、自分の足りない知識ならほとんど全てを網羅している。決して全てを描ききれるものではないとは思うが。
沖縄戦をまず知るのにふさわしい作品だと言える。

特技監督は中野昭慶。火薬量もふんだんで、戦闘シーンの迫力もすごい。
同じゴジラシリーズを手掛ける佐藤勝の音楽と相まっている。
人体の描写は、古さの割にはなかなかむごいので、注意した方がいいかも。
高揚など殆どない。
史実の通り、負け続けて、
誰も彼も悲惨に去っていくのだから…
でも“心さえ壊されなければ取り返しがつく”そんな台詞に鼓舞される。
民間人さえ、捕虜になることを許されない。
あるいは酷たらしい拷問を受け殺されるイメージを植え付けられているから。
正にこれこそ究極のバイオレンス。地獄絵図である。

軍医役の岸田森のニヒルな眼差や
たった5人になってしまった小隊の隊長の高橋悦司らの笑顔
遊郭の女郎が休む間もなくて、ちょっと待ったでおにぎりにかぶりつくところ
散髪屋の田中邦衛の存在感
女学生大谷直子の堂々たる台詞
特攻隊員の辞世の句…
まだまだたくさんある。
軍人、軍属はもちろん、市井の人達にまで描写の印象が強いのが本作の素晴らしさ。

戦争映画に現れる小さな子供。
平和や希望の象徴としてしばし出てくるが、
死屍累々たる場を歩いていく姿は
ここでは“この歴史の上に立っている”という意味合いを強く意識したし、忘れてはならないことだと胸に刻んだ。


沖縄戦の映画は、最近だと『ハクソー・リッジ』
これはその向こうの日本側である。
庵野秀明監督も参考にしているということで、話題にもなった。
『シン・エヴァンゲリオン』が上映されたこのタイミングにでも、おすすめしたい。

「沖縄県民斯ク戦ヘリ 県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ」
大田海軍中将(池部良)が海軍省に電文を打電する。
これは今もって実現されてはいない。

本作は沖縄返還の前年に製作されている。
それは偶然で意図のないものであるとのこと。
ただ返還前に表現されたという意味でも重要な作品。
歴史に残る傑作だと思う。


2021レビュー#148
2021鑑賞No.326

8/15に鑑賞🙏
空海花

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