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左きゝの拳銃のHKのレビュー・感想・評価

左きゝの拳銃(1958年製作の映画)
3.8
先日観た『チザム』の流れで“ビリ-・ザ・キッド”の映画が観たくなり本作をチョイス。
アーサー・ペン(『俺たちに明日はない』『小さな巨人』)の監督デビュー作、ポール・ニューマンがビリーを演じる本作はこれまで観る機会がなくてアマプラで発見してようやく初鑑賞。

物語はニューマン演じる“ウィリアム・H・ボニー(キッドの本名)”が、放浪しているところを牧場主のタンストールに拾われて雇われるところから始まります。
このとき既に殺人者であり孤独だったビリーに親身になってくれたタンストールが、敵対する一派に一方的に虐殺されたことからビリーとその仲間による復讐劇が始まり、通称“ビリ-・ザ・キッド”の悪名が世間に広がっていきます。

他の映画に比べると登場人物や出来事はかなり省略(マーフィーやチザムは出てきません)されてシンプルな構成ですが、リンカーン群戦争と言われる抗争のさなかビリーがターゲットを一人また一人と始末していき、仲の良かったパット・ギャレットに追われる身となり悲劇のラストへ・・・という展開は “ビリー・ザ・キッド”の入門編であり代表作であると言えるでしょう。
この後に作られた“ビリー・ザ・キッド”映画のすべてに影響を与えていると思われます。

タイトルでもわかるとおり、有名な写真の裏焼き説が出るまでビリーは左利きと思われており、ニューマンが左手の華麗なガンさばきを見せてくれます(右利きのキッドの登場は1970年の『チザム』以降だそうです)。

また、当時33歳のニューマンは若く血気盛んながら孤独なアウトロー像を印象付けると同時に、この10年後に『明日に向かって撃て!』で演じることとなるビリーと同じく実在のアウトロー“ブッチ・キャシディ”の面影も見せてくれます。

中盤、ビリーがパットに逮捕される山小屋のシーンやリンカーン郡での脱獄シーンではサム・ペキンパー監督の『ビリー・ザ・キッド/21才の生涯』(1973:原題 “Pat Garrett and Billy the Kid”)とそっくりなカットがいくつもあることに気付きました。
本作を観て自分なりのビリー(むしろパット?)の物語を作りたいと思ったペキンパーの本作へのオマージュでしょう。
ペキンパーの上記作品はリンカーン群戦争後の話であり、時系列では本作の後半部分にあたります。
ちなみに本作の前半部分を描いた別作品として『ヤングガン』(1988)があります。

本作のラストは1881年の7月、ニューメキシコ州フォートサムナーでの出来事で、その約3カ月後にはアリゾナ州のトゥームストーンでOK牧場の決闘が勃発しますが、これはまた別のお話。
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