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ムトゥ 踊るマハラジャのfumingのレビュー・感想・評価

ムトゥ 踊るマハラジャ(1995年製作の映画)
3.0
インド映画を日本に広めたきっかけといえる、金字塔的な作品。細かい脚本など知るかと言わんばかりの勢いに任せ、スーパースター・ラジニカーントが大立ち振る舞い。象が鳴き、煌びやかな衣装のヒロインが艶やかに舞い踊り、カラフルな粉が降り注がれる。これぞ我々外国人が想像する「ザ・インド」を体現する一作である。

本作が日本でここまでウケた理由として、上に挙げたようなステレオタイプ的な突き抜けたインドのイメージを全開に押し出した作品だったからだと思われる。というのも、インドの映画とは主役は大抵美形のアーリア系(白人)で、また特に近年はロケ地や舞台が外国のものが多いなど、もはやインド映画である必要がないものも多い。そういう意味で本作は浅黒い髭面のおっさんや象がドタバタと暴れ回り、妙なハイテンションのダンスシーンを主としたパワープレイで物語が進むといった、我々が思い描いた良くも悪くも未開なインドが本作には詰まっている。こち亀やじゃリン子チエなんかに通づる感じの泥臭さと言えようか。
こんな具合に、脚本やシナリオの面白さは近代のインド映画やハリウッド作品に比べるとお世辞にも秀逸とはいえない。だが、死んだ人間の生まれ変わりや魂の輪廻が物語の重要なテーマに据えられており、そこは非常にインドらしさが息づいていると感じる。またそういったテーマは我々日本人にとっては小難しいヨーロッパ映画なんかよりもよほど分かりやすく、また感動もし易い。ステレオイメージの豪快なインド、そして輪廻転生といったモチーフを正しく昇華したバーフバリが大ヒットしたことは記憶に新しい。インド映画興味を持ったなら、1度は観てほしい作品である。
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