月うさぎ

ムトゥ 踊るマハラジャの月うさぎのレビュー・感想・評価

ムトゥ 踊るマハラジャ(1995年製作の映画)
3.0
手の中にお金が少しあればお前はその金を使える
のど元までお金が詰まっていれば
お前はその金に使われる

20年以上も昔になるのですね。この映画から日本にインドブームが起こったのは。
近年映像と音声がリマスターされ蘇りました。苦手で最後まで観ることができなかった映画なのですが、『RRR』があまりにも感動体験だったので、濃すぎる顔にも耐性がついたかもしれないと、覚悟を決めて鑑賞。
…やはりビジュアルが苦手😅
ムトゥの笑顔が最初から最後まで太った千葉真一に見えてしまって参った。聖者の老け役の方が素敵でした。
腰帯兼用スカーフ?を無駄に強調したアクションはなんなんでしょう?ブルース・リーのパロディ?
ストーリーはラブコメですがコメディ要素がキツい程強い
そして一曲が長いダンス。

人と時間をたっぷり注ぎ込んだ意欲作に間違いないですし、学びや気づきはたっぷりありました。

RRRとはかなり異なる映画でした。例を挙げます。

言語はタミル語(コリウッドというらしい)
(『RRR』はテルグ語映画、トリウッド)
タミル語ってとてもリズム感のある言葉ですね。
タミル語というのはインドの最南にある州で話されている言語で、隣の州の人でさえ全く言葉が通じない事がお笑いネタになっています。民族も異なり、多分料理も違うみたい。インドの多様性を感じます。

映画の冒頭でガンジーへの感謝と敬愛が捧げられます。『RRR』ではエンディングにインドの英雄への敬意が示されましたが、そこにはガンジーの姿はなく、少し不思議に思ったのです。映画のコンセプトに徹底的な違いがある事を思えば、なんらかの意図があったのかもしれません。

ムトゥはとても強いのですが、前提として相手が暴力に訴えた時にやむを得ず力を振います。本当に殴っちゃうよ、とお断りしてから殴るとか。(ボンボンの旦那様のラージャもおっとりした顔しているのに何気に強かった)
非暴力を主張するものでは無いですが、正義の為の闘いを肯定しないという事です。
暴力は暴力として扱われており、その対局が愛を讃える歌とダンスなのですね。
『RRR』ではダンスもバトルでしたが、この映画では感情を表現しているのです。

「聖者」の存在。
このレビューの冒頭の言葉は彼の言葉です。
放浪の身になった時から、身に纏うものも布切れであり、ガンジーを思わせるものです。
人間の力を越える運の肯定は神への信心に由来します

女性の強さを感じます。
ムトゥの仕える大奥様がとっても素敵な方。
慈愛に満ちた笑顔、譲らない強い意志、悲しみの涙に濡れる瞳、知性を感じさせる姿。
私がこの映画の中で一番好きな人です。
物語の要になる存在でもあります。
ヒロインも非力ではありますが、気は強い。
ムトゥとの出会いもケンカで始まります。

80年代のポップスの影響
「クルヴァーリ村で」の曲はマイケル・ジャクソンの「ビリー・ジーン」のバッキングリズムにそっくりだし、踊りもちょっとスリラーっぽい振り付けもあったような。ミーナの表情はまるでマドンナだったし😸

「人を騙すのは罪深いが
人に騙されるのはもっと罪深い」
なんという哲学でしょうか!
インドは本当に奥の深い文化を持った国ですね。
インドブームがこの映画で起きたというのは日本も捨てたもんじゃ無いってことです

とにかくかっこよく強そうに見えないのが惜しい。(私的にはです)
格闘アクションシーンでは全く体に当ててないし、変なジャンプはするし。カメラ目線の見栄を切るところなど、歌舞伎みたいと思えばいいのかも。
月うさぎ

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