むっしゅたいやき

道中の点検のむっしゅたいやきのレビュー・感想・評価

道中の点検(1971年製作の映画)
4.0
戦争に飲み込まれた個人の思い。
アレクセイ・ゲルマン。
前作『七番目の道づれ』の共同監督に不満を持ったゲルマンが、単独でメガホンをとった作品。
原作は作家であった父、ユーリー・ゲルマンの小説に由る。

本作も前作同様、戦争に翻弄される個人を描いた作品である。
今回の舞台は20世紀中盤、独ソ戦、冬将軍の到来したロシアの凍てつき、泥濘に塗れた大地。
主人公はドイツ軍に囚われ、祖国を裏切るより他無かった一人の元赤軍伍長となる。

本作はゲルマンの特徴ともなる無劇伴の作品となるが、モノクロフィルムである事と相俟って、降雪時のあの独特の静けさが上手く表現されている。
また、ジャン・エプシュタインの“フォトジェニー”よろしく、吹雪や降雪のショットで悲哀を負った主人公・ラザレフの心情を顕わしている様に見える。

本作はその“裏切り者の英雄化・神格化”の為か、検閲により撮影フィルムの破棄命令が出され、秘匿の上上映までに14年もの月日が掛かったとのことである。
当時の関係者の、その勇気ある決断を讃えたい。
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