砂場

ナイトムーブスの砂場のレビュー・感想・評価

ナイトムーブス(1975年製作の映画)
4.8
ひとこと、大傑作

まずはあらすじから

ーーーあらすじーーー
■ハリー・モズビー(ジーン・ハックマン)は私立探偵、かつて花形アメフトプレイヤーだった。
金持ちの夫人から失踪した娘デリーを探してほしいとの依頼があった。クスリやって男癖の悪い娘だという。
■ハリーは娘と関係のあったスタントマンのチャラ男クエンティン(ジェームズ・ウッズ)に話を聞く。デリーはフロリダの島に住む義父のトムのところにいるようだ。
■車で移動中に妻の浮気現場を見てしまう。妻とは感情的に口論。
■島にはトムと愛人ポーラとデリーがいた。まだ少女のデリーはハリーを誘う振りをする。ポーラとハリー、デリーの三人はボートで起きに出ると裸で素潜りをしていたデリーが海中に沈む飛行機と操縦席の死体を見てパニックに。母の元には帰りたくないと言い張っていた
デリーだが、死体を見たことで怖くなりハリーと一緒に帰った。
■ハリーは仕事をやめた、妻を許した。
■スタント仲間テディ・ジーグラーがデリーを映画のエキストラに使うと聞いた。しかしデリーが事故死、、、
仲間のところに駆けつけると大怪我をしてギブスをしていた。
スタント中に車の事故で同乗していたデリーは死んだのだ。
■撮影されていたフィルムを写すと一瞬クエンティンの姿が映る。ハリーはこれは仕組まれた殺人ではないかと怪しく思った。
クエンティンを訪ねると殴りかかって逃げていった。
■夫人を訪ねると娘が死んだというのにプールサイドでのんびりしている。ハリーは娘の死で遺産が入ったことを夫人に詰め寄る。
■トムが臭いと考えたハリーは島に向かう。トムはポーラとボートで逃げる準備をしていた。海岸ではクエンティンが死んでいた。

<💢以下ネタバレあり💢>
■ハリーとの殴り合いでトムは死亡。ハリーはポーラに事情を聞くと、海中の死体はエルマンでトムたちは危ない密輸の仕事をしていた。盗んだ50万ドルの遺跡を運ぶ途中に墜落事故。
その遺跡を引き上げようとしていたのだ。
■ボートで飛行機の沈んでいる場所に戻る。ポーラはダイビングスーツで潜る。その時水上飛行機がハリーを銃撃してきた、ポーラが浮上したところに水上飛行機がツッコミポーラは死亡、機体もバラバラになり海中に沈んだ。
ハリーはボートの床の窓から沈んでゆく飛行機を見ると操縦席にはギブスのテディ・ジーグラーがいた。
ーーーあらすじおわりーーー


🎥🎥🎥
フィルマークスのレビュー数も少なくあまり見られていないかもしれないけどハードボイルドの大傑作❗️
個人的にハードボイルドに求めるのは雰囲気❗️雰囲気中心主義❗️
それさえあればプロットが多少無理矢理でもOK
その観点では本作はパーフェクトだ。

まず主演のジーン・ハックマンがかなり渋い。元アメフトのスター選手が冴えない私立探偵に落ちぶれている雰囲気が良く出ている。金持ち夫人からの依頼、妻の浮気など割と普通の展開が続き前半はやや間延び感があるが、海に墜落した飛行機の操縦席の死体を魚がつっついているあたりから奇妙な展開に次ぐ展開、
あの水中の死体は怖いわ、、『ジョーズ』🦈思い出した

いつくかの犯罪が連鎖していて物語は収束するのか発散するのかよくわからないけども雰囲気で押し切る

途中までの物語の軸は家出娘デリーだが呆気なく死んでしまう。
面白いのはこの場面は死を直接描かない点だ。
映画撮影のスタントに参加していた娘は事故にあうのであるが、撮影していたフィルムの再生でハリーはその娘の死を見る。またそこには怪しい動きの男も映っている。映画内映画で死が描写されるというのがなんとも緊張感がある。

さらにラストもハリーは犯人の死を目撃するが水中のガラス越しであり、犯人の顔もよく見えない。ある特徴で人物は特定できるがかなりわかりにくい。水面が揺れる中で沈んでいく男の姿、、この場面は素晴らしい撮影だ。

このようにハリーの視覚がいろんなもので隔てられており、なかなかダイレクトに見えないのである。
ハリーは幼い頃父に捨てられ、大人になって探し出したけども2メートルの距離を埋められず声をかけずに去った。
妻とも距離があるし、このハリーという男は外界と色々隔てられてる感じがする。
ようやく心を開いたなと思った相手は死んでゆくのである

同じハードボイルドでもロバート・ミッチャムの『さらば愛しき女よ』に不満があるのは文学的セリフの朗読みたいなところだ。
この『ナイト・ムーブス』は文学的ではなく視覚的に主人公の孤独感、外界を拒絶する感じが出ていてとてもうまいと思う。

ケリー・ライヒャルトの『ナイト・スリーパーズ』の原題は『Night Moves』で同じであるが、何かオマージュなのだろうか
小屋での殺しのシーンなどはオマージュっぽくもある
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