TaiRa

ナイトムーブスのTaiRaのレビュー・感想・評価

ナイトムーブス(1975年製作の映画)
-
『ロング・グッドバイ』や『インヒアレント・ヴァイス』と同じムードを持つ70年代探偵映画。アーサー・ペンの映画に出て来る男たちはいつも虚しさを抱えている。脚本アラン・シャープが描き続けた哀しき男たちの物語。

元アメフト選手の私立探偵ハリー、40歳。元映画女優から家出娘の捜索依頼。そんな折に、妻の浮気現場を目撃。家出娘を連れ戻したはいいが、彼女は事故死する。仕事の意義も見失い、夫婦関係も行き詰まった中年男の物語。この映画に登場する中年男たちは、主人公以外みんな離婚歴がある。行き場を失った様にグルグルと同じところを回り「なんで、こうなっちまったんだ…」と言葉を漏らし、全てが虚しく終わる。

夫婦喧嘩の際、夫に青白い光が、妻に赤い光が当たる。妻とロメールの映画(『モード家の一夜』)を観に行った浮気相手の胸ぐら掴むと「殴れよ、サム・スペードならやるぜ」なんて言われる。少女に対し「16にもなって赤ん坊みたいだな。まぁいいか、40でも大して変わんねえし」と探偵が言う。クライマックスの飛行機による殺人場面の恐怖。海の中のガラスを隔てた別れ。
TaiRa

TaiRa