むーしゅ

ローラーガールズ・ダイアリーのむーしゅのレビュー・感想・評価

3.7
 自身もかつてローラーダービー選手だったShauna Crossの小説"Derby Girl"を原作として、Drew Barrymoreが初監督を務めた作品。CrossはDrew Barrymoreの映画プロダクション会社Flower Films, Incへ作品を持ち込み、映画化が決定したようです。

 テキサスの田舎町で暮らす17歳のブリスは、母親の夢をかなえるために美人コンテストに出場し続けていたが、ある日街で貰ったチラシを手に見に行ったローラーダービーにすっかり魅了される。ブリスは家族に内緒でチームの新人テストを受けに行くのだが・・・という話。ローラーダービーは1960年代に米国を中心として流行したスポーツで、一時衰退したものの2000年代に入り再ブレイクしてきているのだそう。この映画の公開は2009年なので、まさにその波に乗って製作されたのでしょう。基本は女子選手中心のスポーツのようですが、まるで女子プロレスかのような格闘技要素を持ったスポーツでなかなかかっこいいです。

 本作主演はEllen Pageですが、ほんと彼女がはまり役ですね。美人では無いので可愛いとかそういう感情をもって見るというよりは、決して学校の人気者になれなさそうな絶妙な雰囲気を楽しむ感じのEllen Page。本作でも美人コンテストに出るにはあまりにもね?という内気そうな雰囲気を持った少女を見事に演じています。彼女といえば「JUNO/ジュノ」ですが、どちらの映画も少女の成長を描いていて、そのきっかけとなるものが、ジュノにとっては妊娠、ブリスにとってはローラーダービーだったわけです。自分の殻を破ったブリスは微笑ましくもあり、されどローラーダービー選手というものがそもそも似合っていなさ過ぎて、そこがまた良いですね。作中に出てくるポスターのブリスは特にひどい、他のどの選手でももうちょっとましになりそうです。しかしそれこそが正解なのでEllen Pageにしか出せない味わいだなと思います。最初は場違いだった少女が少しづつ成長していて、初めて見つけた自分のしたいものを必死につかもうとしている姿が良かったです。

 さて物語自体が単純なのもあり基本は、黙ってローラーダービーの試合を楽しむ、という感じの映画ですね。ハードな練習シーンこそ出てきませんが、何でもありの試合構成と勝ちたいという気持ちからチームがひとつになっていく過程がスポ根ドラマっぽいです。ローラースケートを履いた試合なので、スピード感もありエクストリームスポーツのような面白さがあります。そしてそんな試合シーンではやはりDrew Barrymoreがいい味を出していますね。監督だけでなく出演者の1人としてチーム1の荒くれ者スマッシュリーを演じた彼女は、ヒールレスラーの様に暴れまわって盛り上げてくれます。スケート技術だけの試合にスマッシュリーが加わるだけで、格闘技要素が加わり迫力が増していて、試合シーンのハラハラ感がすごいです。実際のローラーダービーの試合が本当にこんな色々な戦術でエルボしたり体当たりしているのかは謎ですが、こんな試合ならそりゃ流行るわという迫力の映像でそこだけでも飽きない映画です。しかしDrew Barrymoreは「マイ・ベスト・フレンド」では本作の主人公ブリスのような人に憧れる内気系女子を演じながら、スマッシュリーのような役もこなし、どちらも様になっていて非常に役の幅が広いです。しかも嫌味じゃないので彼女が出ると映画が1ランク上がる気がしますね。程よいコメディ要素も含めて、ゆったり家でポップコーン片手に見るのがちょうど良い映画です。

 主演のEllen PageはSam Raimi監督作「スペル」の主演が決まっていたにもかかわらず、本作に出演するため「スペル」から降板したのだそう。興行収入だけで見ればあちらが8,000万ドルなのに対し、本作は1,600万ドルとかなり低いため、その決断が良かったのかどうかはわかりませんが、彼女あっての本作なので非常にありがたいですね。
むーしゅ

むーしゅ