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甘い汗のfallenleavesのレビュー・感想・評価

甘い汗(1964年製作の映画)
4.8
あつさのせいで浴びるように酒を飲む。だからこそ余計に変な汗をかき続け、酒を飲んでいた甘い時間は汗になって流れ落ちていく。それが「甘い汗」ということなんじゃないでしょうか。この映画で京マチ子は絶え間なくすごい量の汗をかいています。その汗は水をがぶ飲みすることによって薄められたり、あるいは水を浴びせられることで酔いもろとも洗い流されようとする。酒と汗と水が三つ巴となって、「蒸し暑さ」を観ているものに印象づけます。画面のなかの狭さと密さ加減も「蒸し暑さ」を増幅する舞台装置となっています。
印象的な回想で、娘が駆け落ちする母に追いすがる場面があり、それがクライマックスでは反転して母が娘を追う構図になり、そのときに母が握りしめているものがたいした額でない紙幣というのがあまりに残酷で胸に迫ります。安易な親子関係の修復というテーマをとらず、あくまでも転がるところに転がっていく展開。
佐田啓二がまた悪い男の役でした。昔の恋人の京マチ子に会いにきますが、彼女を騙して最後には塩まで撒くという徹底的な残酷さ。貧困のなかの人情物語に堕してしまいそうなテーマをあくまでも冷静なタッチで冷酷に描くこの映画の面目躍如たる一場面でした。余談ですがこの映画の英題が"Sweet Sweat"というの、しゃれていますね。

2021/4/29 ラピュタ阿佐ヶ谷にてふたたび観る。京マチ子が酔っ払って帰ってきて汗だくで寝ている。その腕にハエがとまって動いている、というショットはすごいですね。女優の腕にハエがとまっちゃうOKテイクなんて観たことありません。
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