半兵衛

殺しの烙印の半兵衛のレビュー・感想・評価

殺しの烙印(1967年製作の映画)
3.3
白黒によるスタイリッシュな映像は半世紀たった今でもカッコいいのに中身が奇妙すぎて戸惑ってしまい、そんなギャップに追い付かないうちに映画は終了し狐につままれたような心持ちに。

殺し屋No.1を巡る話は理解できないものの、そんな殺し屋ランクに翻弄されて身も心もボロボロになっていく宍戸錠を通して日活アクション映画神話の崩壊を画面に刻み込もうとする脚本のメンバーの一人大和屋竺の意図は理解できる。ラストの対決シーンは神話の終焉を演出しているとかしか思えない。

それにしても『荒野のダッチワイフ』といい本作といい、不思議な魔力を持つ脚本を手掛ける大和屋竺は一体何者だったのだろうか。それまで日活映画のルーティングをそれなりに守ってきた鈴木清順監督が本作で一気にたがが外れ、以降は常人の理解を越えた映画世界に飛び出してしまうことを考えるとその凄さがわかるはず。こうした呪われた作品を手掛けた二人が後年『ルパン三世』を手掛け、その突飛だけれどスタイリッシュな映像と語り口で様々なアニメに多大な影響を与えていくというのも皮肉なものを感じる。ちなみに大和屋は『ルパン三世』では脚本や文芸担当のみならず、柏原寛司などテレビドラマで活躍しているセンスのある若手脚本家を参加させて作品の幅を広げるという功績をもたらしている。

あと初見時は気づかなかったが、成人映画でもないのに女性の裸をここまで露出していたのか。
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