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七人の刑事 終着駅の女のMOCOのレビュー・感想・評価

七人の刑事 終着駅の女(1965年製作の映画)
2.5
「刑事さんにお知らせしておきます。殺された人の名前は『松村ゆきえ』北上の人です。
 それからもうひとつ、木島さんは犯人でねえ!」

 1961年から1969年まで385話TV放送された人気シリーズの映画化第一弾、1965年のモノクロで映画す。

 芦田伸介氏が扮する沢田部長刑事のトレードマーク=コートにハンチングスタイルは、警視庁の伝説の刑事、平塚八兵衛を模したと言われています。


 国鉄(現JR) 上野駅16番ホームで、30才前後の女性が鋭利な刃物で刺殺され発見されます。遺体付近から発見されたバッグは女性の物と断定され、中から20時40分の北上(青森)行の切符が見つかります。
 ホームに倒れている女性を発見した駅員は遺体とわかりショックで気を失ったのですが、その目撃証言で足元にあった大きな白い旅行バッグが紛失していることがわかります。

 本庁の刑事七人及び所轄の警察官が捜査にあたり、物証確保のために線路に降りていた本庁の杉山、久保田両刑事は、ホームで酔い潰れている会社員の鞄を奪い取った忠治を捕え、駅構内は時間帯で小悪党の縄張りがあることを聞きつけ、事件当夜ホームを縄張りとしていた正をつきとめ、鍵が掛かったままの白い旅行鞄を押収します。
 鞄の中から子供のために購入したと思われるプラモデルと被害者に宛てたと思われる子供からの手紙などが見つかり、所持品から女性は水商売関係ではないかと推測され、正から事件当夜線路を横切って逃げる下駄の音を聞いたという情報が提供されます。

 女性の身元割り出しが思うように進まない捜査本部に「知人ではないか」と訪ねて来たにも関わらず、ろくに話もせず捜査本部を後にした女性があり、久保田刑事は尾行を行います。
 女性はチンピラに飲み屋に連れこまれ暴行を受けている気配があり、久保田刑事は踏み込むのですが、飲み屋の主人に「痴話喧嘩」と簡単にあしらわれてしまいます。
 久保田刑事は女性と接触し女性が捜査本部にあった遺体の写真を無断で持ち出していることから事件と何らかの関係があると確信するのですが女性は非協力的で隙をつかれ逃げられてしまいます。

 捜査本部は、飲み屋の主人がヤクザ組織の大沢興行(大沢組)の構成員だと分かり、大沢組の捜査を開始しようとした矢先、大沢組から木島真吉という男に自首をさせると電話が入ります。

 身代わりの自首を命じられた木島は、大沢組で売春をさせられているふさ子と夜8時の列車に乗り組から逃げる約束をして身を隠します。
 組を抜け出す覚悟を決めたふさ子は久保田刑事に電話で上野駅16番ホームの女性の情報を提供すると電話を切ります。

 大沢組は木島を確保すべく組員を上野駅に送り込み、久保田刑事等も電話が常磐線の駅構内の公衆電話だったことから上野駅に向かいます。
 沢田部長刑事等はふさ子をマークする大沢組の中にスーツで木製のサンダルの男を発見するのです・・・。


 この頃のTVドラマの撮影は早朝に駅を借りきってエキストラを配しての撮影とは違う街頭ロケが多かったと思われ、その派生なのかこの映画も駅や街中で自然なロケが行われており、俳優や撮影に気がつく通行人が立ち止まり写り混んでも撮り直しなどなく進み、雑踏の中での台詞は雑音に揉み消され聞き取り辛く、無駄なBGMをいれていない分ドキュメンタリーの映像を観るような迫力があります。
 こういった映像を観ると勝新太郎氏が『警視K』で追及したかった『リアリティー』がなんとなくわかります。


 確保したサンダルをはく男の所持品から上野駅で使われたナイフが見つかり事件は解決するのですが、男の所持するナイフが瞬時に殺人に使われたナイフと断定されたり、人を殺したナイフをその後も持ち続けている演出は当時は通用しても現代では子供でも矛盾を感じてしまうもので、不正に切符を売る男は取り逃し、電話をかけるために重要な鍵を握る女性から離れて逃げられて、挙げ句身代わりを命じられた男の確保は組の者に先を越され命を落としてしまうなど「伝説のヘボ刑事集団」と言われてもしょうがない脚本は現代では全く通用しないものです。


 上野駅の殺人事件の犯人は検挙されるのですが、逃走を図った二人には悲惨な結末が待ち受けます。
 都会に幸福を求めて田舎から出てくる若い娘がいつの間にかヤクザの手に落ち、東京から逃げるように帰ろうとした駅には、今日も希望を抱いて若者がやってくる・・・。虚しく映画は締め括られます。

 内容は薄いのですがエキストラのない当時の東京の映像を観ることが出来る映画です。
 幼い頃自分の意思で見ていた訳ではないTVドラマなのですが、聞き覚えのあるBGMが郷愁を誘います。
 40才の大滝秀治さんがとんでもなく老けていました。
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