カトキチ

晩春のカトキチのレビュー・感想・評価

晩春(1949年製作の映画)
5.0
なかなか嫁がない娘をなんとか嫁がせようとする父親の奮闘記。
 
いま観ると家父長制や父と娘の怪しい関係性など時代的に「?」となってしまうがそれでも名作であることに変わりはない。

縦と横の線が覆い尽くす、格子状的な画面設計が気持ちよく、それをフィックスの切り返しで進めていくという独特のリズムに戸惑うかもしれないが、これに慣れてしまえばこちらのもの。

いまだによくわからない「壺」のシーンやリンゴを剥くシーン、そして様々な風景のインサートショットなど純文学のように映像から心情を汲みとるようにできているが語り倒すところはとことん語り倒す。故に説教臭くもなるがそれを笠智衆の演技で書き消すという映画ならではのマジック。なんなら後半の怒涛の展開は娘は嫁ぐのか?嫁がないのか?をめぐるサスペンスのよう。

小津といえば「東京物語」が有名だが、それに勝るとも劣らない最高峰。こちらも深みはあるし、解釈の幅もあるが物語はキャッチーなので小津安二郎はこの映画から観ることをおすすめしたい。

ちなみにクライマックスの父の語りは友人の結婚式のスピーチや祝電など散々パクった。
カトキチ

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