Shaw

晩春のShawのネタバレレビュー・内容・結末

晩春(1949年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

原節子という存在そのものがそうであるように、本作もまたある種ミステリアスな部分が多くある。

自分には、紀子が単に父を愛しすぎるがあまり離れられないのか、ただそういうふうに訳を作るだけで何か個人的な理由から結婚したくないのか、全くわからない。

また我々が最後に彼女を目撃するのは、式直前の花嫁姿のそれだけだ。生きづらく、狭い世の中。あの時代、この国で、いても立ってもいられない日本人に(特に女性に)、残された道は少なかった。

だから「世の中もしこうだったら」考えることもあっただろう。しかしそう考えるとキリがない。そして未来のことも。晩春。始まりの季節の終わり。未知の明日がやってくる。それはたまらなく不安で恐ろしい。

そこに答えはなく、小津はそれを理解していた。この問題をそっとしておくほかはない。諦観と微かなる希望の両方が垣間見えたエンディングは、自分がまさにこの映画に期待しているものだった。
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