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晩春のtntnのレビュー・感想・評価

晩春(1949年製作の映画)
4.1
原節子の表情が恐ろしいほど悲しげ。結婚や見合いの話を退屈そうに聞いている序盤から、家を出ることが避け難い運命であることを悟って目から生気が失われていく終盤まで。父と娘のドラマと評されているし、映画の表面上もそう見えるけど、今見ると「紀子という一人の女性が結婚制度から逃れようとするが逃れらない」という絶望的なドラマにも見える。だから、寝室で遂に「お父さんのことずっと嫌だったの」とつぶやくが、その言葉は父親には聞こえていないという展開に凄み。
自転車デートと、能の帰り道が演出において対比されている。
七里ヶ浜から茅ヶ崎まで自転車で行って帰るの結構時間かかると思うけど、楽しそうだ。
序盤で電車に乗るシーンで、車内の会話のショット→車窓のショットというリズムを厳密に守る編集が、ジャームッシュ『デッドマン』の冒頭の汽車のシーンと同じだった。
他にも黒沢清も連想したし、流石クラシックだ。
有名な壺のシーンに顕著だけど、部屋や家屋という空間そのものを映そうとするかのようなカメラの位置が印象的。
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