このレビューはネタバレを含みます
原節子はこれまで見た作品の中では歯を見せて笑ってる表情が印象に残ってたけど、今作では怒って黙りこむ表情が見れて新鮮だった。口角が下がって澄ました目だと別人に見える。
今見ると結婚せずに父親との生活を続けたい娘が父親含めた親族から半分無理やり結婚させられる悲しい話に見えるけど、終盤の寂しい感じはあくまでも娘を嫁に出した父親目線のものの感じなので、あくまでも当時の社会規範に則った上でのヒューマンドラマ。
旅先の寝室で紀子が父親に結婚したくない旨を訴えるも父親に諭されてしまうシーンは紀子がすごく可愛そうだったし、父親の「わかってくれるね」に、心の中で「いや明らかにわかってないだろ」とずっとつっこんでしまった。ただ紀子も紀子であまりにもお父さんが好きすぎるので、単なる親子愛以上のものにも感じてしまう。
ストーリーは今の価値観には合ってなかったり、あまりにも紀子が理想化されてる感じするものの、いちいち画面が丁寧に整理されているし、会話シーンの取り方や役者に見入ってしまう。テンポ感もちょうどいい。気づくと最後は何故かちょっとウルっときた。
小津安二郎の作品は観る前は毎回ハードルが高く感じるのに、見始めたら思いの外さらっと見れてしまう感じがする。
