nana

晩春のnanaのレビュー・感想・評価

晩春(1949年製作の映画)
4.3
こちらはどうやら小津安二郎が初めて家族テーマを描いた作品だという
見終わった今、「晩春」ってタイトルに物凄くしっくりきてる

本作は表面的に見れば、なんてことはない日常的・普遍的な題材で、随所に差し込まれる静物のカットや構図も、登場人物との会話も、とても日本的で美しい
かと思えば、よくよく注目してみると娘の表情の変わりようにゾワゾワしてしまう
エレクトラコンプレックスにも近い、荒い感情の起伏が垣間見えるような
そして当時の人生観・性差への考え方も当然ながらかなり全面的に現れていて、現代の眼には新鮮に写った

遺作・秋刀魚の味を先に観てしまったからどうしても比べてしまう
何より、父親役まったく同じ俳優さんだし
本作はユーモラスな「秋刀魚の味」より幾分も荒削りで、真剣で、比喩的な作品
だからこそ色々勘ぐってしまう

議題によく挙がるあの壺(1h28m頃)も、
父への甘えや執着心との決別、結婚して女・母となっていくことへの転換のように私は思えた
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