ぶみ

ザ・フライのぶみのレビュー・感想・評価

ザ・フライ(1986年製作の映画)
3.5
Be afraid. Be very afraid.

デヴィッド・クローネンバーグ監督、ジェフ・ゴールドブラム主演によるSFホラーで、1958年公開、カート・ニューマン監督『ハエ男の恐怖』のリメイク。
遺伝子レベルでハエと融合してしまった人間の顛末を描く。
オリジナルは未鑑賞。
主人公となる科学者・セスをゴールドブラム、彼の恋人となる記者・ヴェロニカをジーナ・デイヴィス、ヴェロニカの上司で元恋人であるステイシスをジョン・ゲッツが演じているほか、一瞬ではあるが産婦人科医として、監督自身が登場しているのも見逃せないポイント。
物語は、細胞レベルで物質の分解及び再構築を行う物質転送機「テレポッド」を開発したセスが、有機物での実験失敗が続いていたことから、自らを実験台として転送を行ったところ、テレポッドにハエが紛れ込んでいたため、ハエと融合してしまうセスの姿が描かれるのだが、壁や天井を自由に動き回ることができるようになったのに始まり、剛毛が生えだす、爪や耳が剥がれる、食べ物を溶かす液を吐くようになる等々、徐々にハエの要素が強くなっていく様を、CG夜明け前とも言える時代に再現した特殊効果は迫力十分であり、一見の価値あり。
こう書くと、一見SFパニック的要素が強いのだが、実は、人が人でなくなっていったとしても、果たして愛せるのかどうかというテーマを抱えており、ひいては、ハエは極端な例だったとしても、異端なものがあると排除していく社会の傾向に対して警鐘を鳴らしているような見方もできるのではなかろうか。
もはや、中盤以降はセスを演じているのがゴールドブラムなのかどうかもわからないのだが、前述のように、SFパニックだけではなく、セスとヴェロニカの愛の物語としても楽しめ、森高千里の迷曲『ハエ男』を思い出すとともに、長髪のゴールドブラムが、ばんばひろふみに見えてしょうがなかった怪作。

飛び込まなきゃ、プラズマの泉は味わえない。
ぶみ

ぶみ