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ザ・プレイヤーのRenのレビュー・感想・評価

ザ・プレイヤー(1992年製作の映画)
3.5
ハリウッド批判映画と言われているけどなんだ思ったより倒叙サスペンスとして閉じてるんじゃん、と書こうとしたら怒涛の畳み掛けで豪速球投げてきて笑った。面白い。(カメオ出演を楽しむという見方は薄まるけど)ハリウッドの知識は無くても大丈夫。

毎日数百件の脚本が送られ、採用は年に十数件という狭きハリウッドの門。重役のグリフィン(ティム・ロビンス)のもとに、過去に却下した脚本家から脅迫文が届く....。
基本的にはコロンボの出てこない『刑事コロンボ』で古畑不在の『古畑任三郎』だが、ジャンル映画として観るにはどうも様子がおかしい。グリフィンの犯行追及パートは隅っこに追いやられ、物語の大半を「ハリウッド映画の実情あるある暴露大喜利」が牽引する。

殺害シーンは嘘みたいなライティングで。
男女が惹かれ合うことに明確な理由なんて無い。
何の必要も無いところに顔面ドアップのベッドシーンを。
『ザ・プレイヤー』はハリウッドの師匠による「誇張しすぎたハリウッド映画」だ。

売れるハリウッド映画に必要なのは....と要素をごたごた並べ立て、映画はハッピーエンドで閉じねば意味が無いと劇中何度もしつこく繰り返す。何の前情報も無く観始めたとて次第にこの映画のやりたいことが分かってくる自分たちとしては、ご丁寧なフリをありがとうございますという感じ。

なのでやはりラスト12分がどうしたって面白すぎる。押せよ押せよと言い続けた100分、いやなんで押さないんだよ!と振り返った直後にお望み通り熱湯風呂へ突き落とす。想像通り、いや想像を超えてやってくれてありがとう。落ちませんでしたというスカしはどうせウケないんだから落とそうや、と肥えた成金プロデューサーがセット裏でニヤニヤ笑っている。
観ているときこそ「そんな短絡的な思考で映画を作るな」とぷんぷん怒っていた我々観客をしっかり巻き込む。ハリウッドのプロデューサーは馬鹿ばっかりだと思ったでしょ?でもあんたも『ザ・プレイヤー』観てまっせ、と。これ以上の皮肉は無い。

一つ、名だたる名優陣の中でウーピー・ゴールドバーグがカメオではない演者出演だったのがやはり気になった。彼女はむしろこの世界では浮いている。
ほとんどが「映画」の枠組みに取り込まれた世界で、ゴールドバーグ演じる刑事たちのみが現実世界の住人なのではと思った。「映画」の世界で「映画」のような言動をするグリフィンが彼女たちには可笑しくてたまらないのだ。
終盤、彼女が窓からグリフィンを見つめるカットがある。なんてことない場面だが、映画を現実が見つめる冷ややかなあの目はヘタをするとホラーだ。

観た誰もが語りたくなる冒頭8分の長回し。過去の長回しを用いた名作映画を雑談する彼らをやはり長回しで捉え続ける。
雑然と忙しないハリウッドの日常をリアル(笑)に捉えるという点で意味もありつつ、基本的には長回しを見せるための長回し。この映画だからこそ許される、「技法のための技法」という見せ方。

その他、
○ 冒頭のカチンコの音。メタ視点重視の映画なことを刷り込むと同時に、物語的な必然もある良い演出。ラストとしっかり繋がる。
○ ラストのやりたい放題。劇中の大量のカメオはここにバトンを繋げるためだったのか。
○ 中盤はかなり中弛みだったかな....。
○ 複数個のお題ワードを入れ込んだ漫才を作る番組で金属バットが、お題と関係の無い漫才を続けラストに脈絡無く強引にワードを連発し終わったことを思い出した。
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