ふき

ランボーのふきのレビュー・感想・評価

ランボー(1982年製作の映画)
4.5
ディヴィッド・マレル氏原作の小説『一人だけの軍隊』の映画化であり、シルヴェスター・スタローン氏の代表作。
ベトナム戦争後のアメリカ国民から疎外される帰還兵を、とある田舎町の保安官たちと一人の元グリーンベレー隊員のジョン・J・ランボーに集約して描いている。

ランボーというと『コマンドー』のジョン・メイトリクスのような勧善懲悪アクションキャラクターとイメージされることが多いが、「心に傷を負ったベトナム帰還兵」という設定において、『タクシードライバー』のトラヴィス・ビックルに近い。映画自体も暴力でスカッとカタルシスを得るタイプのアクション映画ではなく、ランボーが暴力を振るうことについて考えさせられるヴァイオレンス映画だ。
映画の構成そのものは「うっかりランボーに手を出した街の保安官たちが、逆に一人ずつ襲われていく」という、いわゆる(?)「舐めてた相手が殺人マシンでした」ものだ。だが実際には追い詰められているのはランボーで、追い詰めている保安官たちはそれを理解していないから、両者の溝は埋まらない。観客からすれば「First Blood(最初に仕掛けた)は保安官」という構図が分かっているからランボーに肩入れしたいのに、クソ保安官を痛めつけた分だけランボーに罪が跳ね返ってくるのが予感できるから、スカッとできない。その泥沼感が解消される最後の最後まで、観客はランボーの「終わりのない戦争」に付き合わなければならない。
これを一度でも体験していれば、「ランボー? 筋肉バカのアレだろ?w」などと舐めた口は利けなくなるはずだ。本作の保安官たちのように。

ところで保安官の一人であるティーズルは、原作では朝鮮戦争からの帰還兵と設定されており(本作でも一応勲章が映っている)、最終的には帰還兵同士の戦いにシフトしていく。それもまた味わい深い展開ではあるが、映画版のようにランボーに寄り添った語り口の方が、私には好みだ。
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