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きっと全て大丈夫のmazdaのレビュー・感想・評価

きっと全て大丈夫(2006年製作の映画)
3.7
久しぶりにレビューしにくい映画。ドンハーツフェルトの短編作品「きっと全て大丈夫」「あなたは私の誇り」「なんて素敵な日」をまとめた長編特別編。
1人の青年が病気で脳が壊れていくアニメ。誰でも書けるような棒線で描かれる絵に対して、つきつけるものがとてつもなく深くだだっ広く、永遠に掘り下げられそうで、こういうのを難解っていうと思った。作者がこのアニメを通して描きたかったものを私は100%で全てキャッチできないなっていうくらい要素が多い。

62分がすごく長く思えた。良かったけど見終えた時の疲労感。誰かの記憶をずっと見せられてるみたい。それも酷な話だけど脳が崩壊していく人の頭の中だから、夢と現実が混ざり合ってる感じにすごく酔った。
断片的に覚えてる些細な記憶、夢の話、他人にはわからないようなこだわり、周りの人間に感じるきもち これら全てを、まるで無感情みたいに刻んで混ぜこぜにして流してる。この記憶の映像だけで虚無感でいっぱいになる。
毎日同じように繰り返す日々を重ねて記憶が生まれている。記憶が壊れていくのは日常が壊れていくことと同じだと思った。複雑なきもちになる、切ないとか悲しいとか容易く言いたくないなあって思ったんだけどそれらに近い。当てはまる言葉が見つからない。
同じ行動を繰り返す青年と青年の母が手紙を書く練習をするシーンが焼付くように印象に残ってる。
何が大丈夫でこんなタイトルなんだろうってくらい不安になるんだけど、きっと全て大丈夫と思わなければバランスを保てないくらい私達は不安定だと思った。だからこんな棒線みたいな人なのかな。
好きな映画って感じではないけど、何度でも見たい映画。とてもじゃないけど1回2回じゃこの映画をわかりきれる気がしない。
またどこかで上映されるのを待って再レビュー。
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