色んな意味でキ印の入った空前絶後の企画である。まるで『タイタニック』並みの予算で撮ったゴダール作品のような雰囲気…と言ったらいいのか知らんが。
ロシアが生んだ異常天才・アレクセイ・ゲルマンによる全編、終末的ムードてんこ盛りの歴史大作。まさにカーニバル的世界感覚。
独裁者スターリンのそっくりさんであるユダヤ人の中年男が国家的陰謀に嵌り、代替されるまでを時系列バラバラで構築した徹頭徹尾カオスな作品。何が何だかサッパリ分からないが凄い熱量だ。
全編しつこい程の長回しや節操なく移動するカメラワーク、粒子の荒いモノクロ映像が破壊的なインパクトを与える。かなり抽象度の高いメタ的な物語構造ではあるし、観ていて疲れるが演出の技量というか重量感はとんでもないものがある。
この世界観についていけない人は全くついていけないだろうし、物語の全体像を把握するには相当時間を費やす難解ぶり。恐らく主人公の視点を通して「世界」「歴史」そのものを画面に投射しているのだろう。
通常の映画とはスケールのデカさが違う、破格のボリュームを誇る超前衛作品となった。恐ろしい…。