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ベニスに死すのspitfireのレビュー・感想・評価

ベニスに死す(1971年製作の映画)
3.8
この手で美を創り出さんと苦悩する音楽家が、生まれながらにして美を体現する少年と出会ってしまう。美少年映画の金字塔にして、後年明らかになった問題も含めて業の深い1本。70年代の少女漫画に与えた影響が甚大で、萩尾望都を愛読する身としては向き合わざるを得ませんでした。それがカルマでも、ですね。

美しい劇伴とベニスの情景、そして稀代の美少年がが重ねられ、「推しがいる世界はこんなにも美しい」という表現が成立する。一方でベニスにはコレラが蔓延していて、実態は優雅なものではない。また芸術の道に迷う中で圧倒的な美の化身を目にした結果、自身は憧れと劣等感に引き裂かれてもいる。ベニスの光と闇、そして自らの葛藤の重ね合わせ。

んで何がカルマかというと、少年に目を向けていることや、目を向けたことに対する罪悪感が表れないこと。自らの罪を棚上げにした罪。現代の倫理で評価する身としてはギルティというほか無いのですが、オールド少女漫画読者としては、私にもこういう欲望があることに向き合わざるを得ません。非常に身につまされます。ビョルン・アンドレセンが美しかったことは間違いありませんが、その美しさに目を焼かれるとはどういうことか。「世界で一番美しい少年」も見て、自らのカルマについて掘り下げたいと思います。
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