みりお

ベニスに死すのみりおのレビュー・感想・評価

ベニスに死す(1971年製作の映画)
4.2
ゴゼ10にて鑑賞🌟
この作品に初めて出会ったのは、14.5歳だったかなぁ。
昔ながらの名作にあまり触れてこなかった、中学生のみりおには衝撃的でした。
ほとんど台詞のない展開と、粗いのにともかく美しい映像。
映画ってこういう作品のことを言うんだなって思わせてくれた作品です✨
それがスクリーンで観られるとあらば、これはもう行くしかないっ🎉

究極の美とは、創造や製作からは成し得ないものだと信じる芸術家・アッシェンバッハ。
自身が芸術家でありながら、芸術では美は作れないと信じる、若干頭の固い、初老の紳士。
そんな彼が、ある失意の元向かった旅先・ベニスで、究極の美を体現する美少年・タジオに出会ったことで、物語は動き出す。

当初彼を少女と見間違い、胸を高鳴らせたアッシェンバッハ。
しかし彼が少年だと気づいたのちも、美への憧れが彼の想いを突き動かし、その憧れは止むことがなかった。
数十歳も年下の、同性の少年に感じる憧れ…その想いに違和感を感じ、打ち消そうとするアッシェンバッハだったが、人生の大きな躓きを経てもなし得なかった、"感性で美に向き合う"ということを、タジオに肌で感じさせられ、憧れを止めることができない。
彼の強すぎる憧れは、いつしか恋とも愛とも取れる感情へと変わっていき、究極の美・タジオの前で、彼は自らを着飾り始める。

「創造や模倣では、美は成し得ない」と数十年信じてきた彼が、タジオと面と向き合うために着飾り、化粧をし、若返るために髪を染め、荷物配送の手違いで旅から戻れないことに喜び、頬を染める…
一見滑稽で痛々しいと感じる姿でもあるのに、なぜか羨ましかった。
自分の信念をかなぐり捨ててでも、追い求めたい、手に入れたいと思うほどの理想に出会えた瞬間のアッシェンバッハの表情が、まるで大好きなおもちゃを見つけた少年のようだったから。
そんな風に手放しで喜べる理想を見つけることなんて、この先の人生あるんだろうかって、少し思ってたから。

おそらくアッシェンバッハは、性の対象としてタジオを愛したのではない。
自らが追い求めたナチュラルな美を体現するタジオを前に、"守りたい"、"この美を失いたくない"という、清い感情に基づいて、彼はタジオを愛した。
その愛があまりに美しくて、タイトル通りのラストを迎えるアッシェンバッハの表情を見ると、ピュアな愛情に心が動かされる。
不釣り合いな白粉と口紅、不自然に整えられた髭と、額へと流れ落ちる髪染め…
どれもが美とはかけ離れているのに、あまりに美しい愛情により、アッシェンバッハが究極の美にようやく辿り着けたように感じるラスト。
夕焼けの美しい海の中、タジオが指差す先に、アッシェンバッハはずっと欲しかった究極の美が見えていたのだと、そう思いたい。


【ストーリー】

1911年、イタリア・ベニス。
静養に訪れた作曲家のアッシェンバッハ(ダーク・ボガード)は、宿泊先のホテルで見掛けた少年タジオ(ビョルン・アンドレセン)に一目で心を奪われる。
タジオへの想いが抑えられないアッシェンバッハだったが、折しもベニスではコレラが蔓延し始め……。


【キャスト・スタッフ】

*監督:ルキノ・ヴィスコンティ

1906年、イタリア生まれ🇮🇹
実家は貴族の傍流で、ヴィスコンティは14世紀に建てられた城で、幼少期から芸術に親しんで育ったそうです✨
1926年軍隊生活を送ったあと、1928年から舞台俳優兼セット・デザイナーとして働き始め、1936年にはココ・シャネルの紹介でジャン・ルノワールと出会い、アシスタントとしてルノワールの映画製作に携わるようになりました🍀
そして1942年『郵便配達は二度ベルを鳴らす』で映画監督としてデビュー🌟
その後はヴェネツィア国際映画祭の常連となり、またカンヌ・パルムドールを『山猫』で受賞✨
本作もカンヌの25周年記念賞を受賞しています🍀
1969年の『地獄に堕ちた勇者ども』、1971年の本作『ベニスに死す』1972年の『ルートヴィヒ』は、19世紀後半から20世紀前半のドイツ圏の爛熟と崩壊を遡る形で描いた「ドイツ三部作」と呼ばれるそうです🎉
その他の監督作は『白夜』『若者のすべて』など。


*タージオ:ビョルン・アンドレセン

あああああああ❤️❤️
ほんっとーーーに美しい!
リアル天使👼美の極致✨
みりおの美少年ランキング、ダントツの1位です💓
ビョルンはスウェーデン出身🇸🇪
ストックホルムの音楽学校でクラシックを学びましたが、好みはビートルズなどのロックで、13歳の頃からバンドを組み、あちこちで演奏していたとのこと👀
同時期、祖母の勧めで子役として活動を始め、1969年に青春映画『純愛日記』に端役で出演したのがスクリーンデビュー🌟
そして1970年、ヴィスコンティが『ベニスに死す』の映画化の為に、主人公を虜にする少年タジオ役を求めてヨーロッパ中を探していた頃、まだ友人とバンドを組んでいたビョルンが彼の目に止まり、数多くの候補者の中から選ばれたそうです✨
ヴィスコンティは、ビョルンと出会ったあまりの衝撃を残すべくオーディションの様子を収めた30分の特別番組『タジオを求めて』を監督し、その中で「出会った瞬間、タジオがそこにいたと思った」と語っています。
本作のヒットと、そのあまりの美貌から彼の元には多数の映画出演依頼が舞い込んだそうですが、映画のイメージを押し付けられ、好奇の目にさらされることを嫌ったビョルンは、スウェーデンに戻って普通の学生生活を謳歌したそうです。
そのため彼の他の出演作は『絶壁』『安易な殺人者』の2本しかありません💦


*アッシェンバッハ:ダーク・ボガート

イングランド出身🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿
美術学校で舞台美術などを学び、ロンドンの舞台で裏方として働いていましたが、ある時、俳優の一人が急遽出演出来なくなった舞台に代役として立って、俳優としてのキャリアをスタートさせました😂
しかしその後第二次世界大戦に従軍し、大戦終了後の1947年に再び俳優として活動を始め、同年映画デビュー🌟
以降イギリスを代表する名優として活躍し、英国アカデミー賞を何度か受賞しています🎉
ハリウッドからも誘われ続けたそうですが、ほとんど誘いには乗らなかったとのこと💦
主な出演作は『召使』『地獄に落ちた勇者ども』『愛の嵐』など。
みりお

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