三四郎

ベニスに死すの三四郎のレビュー・感想・評価

ベニスに死す(1971年製作の映画)
3.0
母が一番好きな映画。映画のパンフレットまで綺麗なまま実家に保管してある笑
映画は恐らく小学生の頃に母と観て(いや、見せられて?)、小説は高校3年生の時、やはり母から勧められて読んだ。しかし、小説も映画も、もう一度読みたいとか観たいとかは思わないかな…。

『ヴェニスに死す』は、市民的規律と藝術的浪漫とのバランスの上に成立していた藝術家アッシェンバッハの生活が、「美」を追い駆けた同性愛により、倫理的に崩壊。そして「美」への欲望の果てには「死」があった…という物語だと私は勝手に解釈している。

原作では主人公が作家であるのに対し、映画では主人公が音楽家となっている。作者トーマス・マン自身「『ヴェニスに死す』の主人公は作曲家のグスタフ・マーラーをモデルにした」と述べているが、主人公を音楽家としたことで、小説では不可能な聴覚に訴える演出を利用し、映画の魅力を増幅したように思う。

この映画において、恐らく「海」は「死」を表し、エスメラルダ号、ゴンドラ、小さな蒸気船、黒いボートと、船が4度登場するが、これらの船はアッシェンバッハを「死」へと導く「棺」として描かれているのだろう。
「海」が「死」を表すなら「陸」は「生」を表し、映画の中心舞台である砂浜において、「美」を体現するタッジオ少年は「海」を背景にして動き回り、その「美」を目で追う「陸」にいるアッシェンバッハの視線は基本的に「海」=「死」の方へと向けられている。
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