かーくんとしょー

遠い空の向こうにのかーくんとしょーのレビュー・感想・評価

遠い空の向こうに(1999年製作の映画)
4.3
実話に基づいた少年の成功物語。
典型的なアメリカンドリームものには辟易することもあるが、偶然ではなく努力で運命を切り拓いていくこの物語には深い感動を覚えた。

またアメリカンドリームに父子対立が上手く絡んでくる。
時代背景から、家長制度的な難しさが一貫してある一方、炭坑町のムラ社会的な連帯感も生きており、周囲の助けが温かいのも良かった。

成功を掴んだ主人公たちが素晴らしいことは言うまでもないが、この周りの大人たちの助けが非常に胸を打つ。
いつの時代も子どもは夢を見、それ以上にバカであって、そんな子どもたちの夢や可能性には間違いなく大人が必要なのだ。
そんな大人がアメリカに比較的多く感じるのは、やはり国民全体にアメリカンドリーム精神が生きている故だろう。

ライリー先生は、ただでなくとも女性で立場が弱いだろうに、主人公たちの夢の背中を押し、時に道を示してくれる素晴らしい教師。
工場で溶接を手伝ってくれるおっちゃん二人も、子どもの夢や失敗を笑わず受け止めてくれる。
父母も形は違えど息子を愛し、最後は信頼して子どもの夢のために手を添える。

そして何より、フォン・ブラウン博士は、子どもに夢を見させる実績はもちろんのこと、それだけの人物にも関わらず片田舎の少年からの手紙にも丁寧に返事を書く人物。
それが孤独な努力を続ける少年にどれだけ力になったことだろう。

本作は子どもに夢見ることの素晴らしさを伝えるだけでなく、それをフォローすべき大人たちに是非観てもらいたい作品だった。

最後に、揚げ足取りのようになってしまい恐縮だが、気になった点は以下の二つ。

一つ目は、少年のうちの一人の叔父がアル中なのだが、その叔父が主人公宅に拳銃を撃つシーン。
直後のまるで死亡フラグのような台詞もあり、正直これ以降いつ主人公の父が殺されてしまうか気が気でなかった。
(ラストの感動シーンでさえも、弾丸が飛んでこないか心配だった。(笑))

二つ目は、クラスのマドンナ的な女の子と、正ヒロインの女の子の扱い。
主人公はマドンナに当初片想いしているのだが、最後は尻軽なマドンナではなく主人公にずっと想いを寄せてくれていた正ヒロインを選ぶ。
それ自体はよくあることだが、どちらも(特に正ヒロインは)あまりストーリーに絡まず、努力の物語に無理やり恋を絡めた感があった。

written by K.
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