神保町の古本屋で映画のパンフレットを買った。黒になりきらない青に近い紺色の空とバブリーな色合いの岸谷五朗とルビーモレノ、手書きの映画タイトル。それだけが気になって、私の狭いアパートの壁には4年間この映画のパンフレットが貼られ続けていた。中国人の映画に美術で使いたいと言われ、引っ越しのタイミングもあって、壁紙を全部剥がした。私の家を模した他人の家で私は撮影陣が中国語で何かを言い合うのを小耳に挟みながら私は自分の部屋に貼られていた紙の事を眺めていた。ずっと貼られていたはずなのに一度も読むことのなかったこの映画の後日譚を改めてまじまじと読んだ。ゲラゲラと笑いながら読んだ。それで4年越しに鑑賞に至ったわけだった。
すごく良かったね。
「今、自分はどこにいるんですかね」
「担保さん、月はどっちに出ていますか?」
「東か、西か、南です」
「月に向かって走ってきてください」