うめ

リトル・ミス・サンシャインのうめのレビュー・感想・評価

4.4
 アカデミー賞関連作、鑑賞その10。第79回アカデミー賞で助演男優賞と脚本賞を獲得している。ぽっちゃり体型の女の子オリーヴがミスコンに出るために、家族全員でワゴンに乗りミスコン会場まで向かう様子を描くロードムービー。

 もう一度観たい!と思っていた作品の一つ。ようやく観ることができたのが…ストーリーの素晴らしさと俳優のハマり具合に感動した。画面や演出は至ってシンプルなのもあって、その二つの良さがとても引き立っていた。

 キャラクターがそれぞれとても魅力的。「勝利」にこだわるお父さん、その夫に辟易しているお母さん、ドラッグ漬けでエロ大好きなおじいちゃん、空軍学校に通うために沈黙を貫いているお兄ちゃん、ゲイの学者で自殺未遂をしてしまった伯父さん…それぞれのキャラクターの特徴や心情がさらっとキャラクターの設定やストーリーの中に落とし込まれているのが、とても上手いと思った。また、少しぎすぎすしている家族の雰囲気をオリーヴが和らげており、観客がストーリーを理解する上で、取っ付きやすい家族を生み出していたのも良かった。

 俳優も皆、ハマり役なのではないかと思うくらい良かった。皆コメディになり過ぎず、重いドラマになり過ぎずのちょうどいいバランス。でも強いて一番を挙げるなら、やはりオリーヴ役のアビゲイル・ブレスリンだろう。今はもうすっかり大きくなって綺麗な女優になっているが、今作ではぽっちゃりした女の子を「ちょうどいい可愛さ」で演じている。パッと見てすごく整った顔をしている訳ではないのだが、笑顔が可愛くてどこか愛嬌のある顔をしているのが、オリーヴ役にぴったり。ほんと彼女なしでは考えられません、この作品。

 今作の結末はよくよく考えてみると、ありがちなもの。すごく練られている結末でもない。でもキャラクターの魅力的な設定と俳優たちの演技によって、心が温まる結末となっている。くすりと笑える展開の中で、その裏にある生きる喜びや家族の存在という普遍的なテーマを(本当に少しだけ)匂わせている。がっつりした重厚な人間ドラマでもいいけれど、たまにはこういうゆるいドラマもいいものだなぁと思った。

 人生の色んなことに疲れても「自分は自分。今のままでいいじゃないか。」と束の間の休息時間をくれる作品。疲れたらまた、あのワゴンに飛び乗って元気をもらおう。
うめ

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