mitakosama

リトル・ミス・サンシャインのmitakosamaのレビュー・感想・評価

4.5
ロードムービー数あれど、個人的には今作がベストオブベスト。
少女のJrミスコンの出場に因む家族の再生劇をコミカルに描いた傑作だ。

フーバー家のオリーブはミスコンに憧れるメガネ少女。若干ぽっちゃり。
母親は比較的マトモ。親父は自己啓発本の出版を控える勝利至上主義者。
兄は空軍パイロットを目指し、口をきかないという謎の願掛けを実行中。
祖父は性欲が強い豪快な性格で、オリーブにミスコン用のダンスレッスンをしている。
更に母方の叔父がゲイのインテリ学者で自殺未遂で経過観察を受けている。

オリーブのミスコン全国大会の出場が決まりカリフォルニアまで車で移動する事と成る。
両親はもちろん、ダンスコーチの祖父に、自殺の恐れがある叔父を放っておけないので兄と共に一家全員で旅をすることとなる。

先ず、この家族が全員で行動をするための理由付けが上手い。やはり自殺未遂の叔父がいるために“一人で留守番させる訳にいかない”という動機付けが素晴らしい。
この映画は、娘の為に一家全員で旅をするというコンセプトが重要だからね。その設定に無理がない脚本が秀逸だ。

そして黄色いワーゲンのバンで移動する。オンボロで走り出すのに全員で押さないとエンジンが掛からない。この“家族全員が力を合わせて”乗る車というのがこの映画の最も象徴的なガジェットだ。しかも黄色くキッチュなカラーリングでとても可愛らしい。この一家が潜在的に持つ明るさを形容しているビジュアルだということが判る。

旅を続ける中、親父は出版計画が頓挫し自らの勝利至上主義が崩壊。叔父は好きだった男に再会し惨めな想いをし、息子は色弱が発覚してパイロットの道が閉ざされる。
そしてあろうことか、祖父は死ぬ(笑)
これらの家族の問題を、娘のために力を合わせお互いに乗り越えていく。

そして肝心のミスコンシーンが輪をかけて面白い。一人ポッコリおなかでポーズもウォーキングも出来ないオリーブは祖父が残した下品なダンスを披露し顰蹙を買う中、家族全員でステージを奪取しミスコンそのものを無茶苦茶にしちゃう(笑)
ミスコンというジャンル自体を否定して、勝利至上主義に別れを告げた一家のなんと清々しいことよ。祖父が言う「負け犬とは結果に怯えてチャレンジしなかった者をいう。チャレンジした時点で勝者だ」というポジティブなメッセージが何より温かい。

ダメ人間賛歌の人間愛溢れる名作。気分が滅入ってる人がいたら真っ先にお勧めすべき1本だ。必見!
mitakosama

mitakosama