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ベロニカ・フォスのあこがれのsのレビュー・感想・評価

4.5
西ドイツ版サンセット大通り。戦前ドイツに取り残された、過去の栄光に縋る忘れ去られた大女優ヴェロニカ・フォスの悲惨な半生と破滅まで。手前のものをぼかしたり、部屋、車のガラス越しなどカメラワークが終始美しい。あとトランジションにやたら凝っていたりする。「光と影、それが映画の秘密」「私は光と影のある女よ」などといった台詞が暗示するように光と影、白と黒という対比が重要なんだろう。映画の序盤で、この光は嫌だからと突然大声を上げてローソクの火を灯すよう指示する気狂いホラーシーンがあった。

老人以上に他人の秘密を知るのは医者であるということで老夫婦に案内された精神科医がまさに闇。その闇を隠蔽するかのように診療所の中は露光過多すぎるのではというくらい強烈に明るい白。モルヒネ漬けにして患者から金を根刮ぎ奪い取る敗戦直後のドイツの闇。「夢を作るの、お金ではなく」!
タクシーに乗り込み「ミュンヘン サッカースタジアムへ」と伝えて終わるラスト。そうだこの人スポーツ記者だったんだわと、色んな夢から醒める瞬間。白昼夢のような白いフィルムノワール。ヴェロニカが診療所で放った、「死ぬって変な感じかしら。でも生きることも変よ」という言葉が強烈。
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