カタパルトスープレックス

ベロニカ・フォスのあこがれのカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

3.3
ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督の遺作となるサスペンスです。『マリア・ブラウンの結婚』(1979年)、『ローラ』(1981)につづく西ドイツの戦後復興を描く「西ドイツ三部作(Bundesrepublik Deutschland Trilogy)」の第三作目です。モノクロ作品。

「西ドイツ三部作」は西ドイツの戦後の復興を背景として女性を描いた作品群ですが、スタイルはかなり異なります。『マリア・ブラウンの結婚』はドラマ、『ローラ』はメロドラマで本作はサスペンス。ビリー・ワイルダー監督の『サンセット大通り』を探偵ものに仕上げた感じです。

マリア・ブラウンもローラもとても強い女性で復興を印象付ける存在でした。しかし、本作のヴェロニカ・フォスはとても弱い女性で戦後に落魄れた女優です。ここから西ドイツ戦後の復興の何を汲み取ったらいいのか、正直に言えばその意図がつかみかねました。自分にとっての映画の三本柱のテーマがよくわからないのです。

キャラクター造形は過去の栄光が忘れられずに精神的に不安定なヴェロニカ・フォスがよく描かれていたと思います。その分、周りの登場人物たちが他のファスビンダー作品に比べて印象が弱かったです。

まあ、やはり全体的にファスビンダーらしさはあるものの、過去の作品と比べると特別感はあまり感じなかったのが正直なところです。